浮遊する無名作家の浅慮

コミック版『29とJK』完結おめでとうございます。【漫画レビュー】

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無事、最後まで読み切る事ができました。いやー、すごく面白かったです。

実は漫画から入ってしまったもので、本家本元のライトノベルは読んでいないにわかなのですが。漫画版は小説の2巻までの内容らしく、そこから先は原作で追い掛けたいなー、と思っている所です。

もしかしたら、今学生ですバイトもしてません! という人には、あんまりピンと来ない内容かもしれません。当時の自分だったら読んでもいないような気がします。

でも、社会人経験があったら染みるんだ。いや、染みて欲しいという願いもこめて。

今回は、そんな『29とJK』についての紹介などできれば良いなと。





あまりにも奇抜すぎる設定の話。

この作品は、『そんなんアリなんすか』と思わず言いたくなるような、あまりにも聞いたことがないあらすじから始まります。

主人公はコールセンター勤務のサラリーマン。漫画喫茶で時間を潰すのを趣味にしていた所、そこでJKと出会ってしまい、しかもそんな出会いから告白され。

それをフッた所、今度は社長呼び出しを喰らい、業務命令でそのJKと付き合う事になるという……。


そんな話は聞いたことがない!


もっとこう、作品のテーマってわりと抽象的だったりするじゃないですか。あ、そんなテーマもあるよねとか、あーそういう主人公も面白いねとか、なんか想像に溢れた、そういうものが。

コールセンター勤務ですよ。コールセンター。いるいる! めちゃくちゃ現実的。

でも、起こっている出来事はだいぶファンタジー。業務命令で付き合うってこたあないでしょうよ。

そんな、現実と空想の狭間のような奇妙な空間が、ここには展開されていて。

じゃあ内容が微妙かと言われると、これが見事に繋がっていくんですよ。全部必要な設定。歳の差にもちゃんと意味が生まれている。

ありそうでなかった作品は沢山ありますが、どちらかと言うとこの作品は『なさそうだけど、ある』的な何かだと思います。


後悔とか挫折とか、努力とか。

そして、そんな奇抜な設定の上に何が練り上げられているのかと言えば、社会人になってわりと年数が経っているこの主人公、様々な挫折と妥協の上に成り立っており。

夢があって、一度は何かを目指したけど駄目だった人って、本当に多いと思います。それはきっと、そのまま成功した人よりも遥かに多いはずで。

そんな、挫折した全ての人達を代表するかのような設定の上にいる主人公。これがまず、惹きつけられてしまいます。

彼には未来がなく、夢らしい夢もなく、とても現実的な暮らしをして、現実的な問題を抱えている。

対して、夢と未来に満ち溢れているヒロイン。JKなので、まだ養われる立場の人間なわけで。大人としての生活や現実感がない代わりに、それを希望と目標で埋めていると。

こういう対極にいる二人を土台に据えた物語なわけです。

この構図を生み出すための設定とファンタジー要素だと言うのならば、これはとっても納得だし、受け入れられます。冒頭の奇妙な設定でさえ、珍味のようなうまさを醸し出しており。

そんな二人が立ち向かう敵は、現実感のある主人公にしてみれば『社会問題』と『過去との決着』。

夢を追い掛けるヒロインにしてみれば、『大人の壁』と『未来への挑戦』。

そんな『雑味あるストレート』とも言えそうな二つの混ざった物語に、やがては惹き込まれ、ページをめくる手が止まらない。


やっぱり原作も1巻から読もうかな……。



というわけで、『29とJK』は、夢を諦めたすべてのサラリーマンにおすすめしたい作品だなあと。そんな事を考えております。

なんかちょっと萌え要素ある感じですが、中身を開けてみるとそういう成分より、社会人のリアル的な側面の方を強く感じます。

挫折しても努力家な主人公には尊敬の念すら覚えるし、過去の痛みは本当に痛い。このリアルな部分は、あらすじだけでは中々伝わらない部分でしょう。

原作読みたいなーと思うのは漫画が素晴らしかったからで、コミックの方もすごい迫力なので、気軽に手に取れるこちらから読んでみるのも良いかと思います。

いやー。私も、過去の自分はいつだって思い出したくないですわ。


お後がよろしいようで。




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