浮遊する無名作家の浅慮

小説を書く上で最も重要な、『シーン』の考え方。

小説を書く上で最も重要な、『シーン』の考え方。


さて、前回は『シーンってなんだろう? どうやって書けば良いんだろう?』といった問題を抱え、プロットの説明が終了した所でしたね。

シーンとは、一体何の事だったでしょうか。

……そうです。それは、物語に変化を与える場面であり。

ことヒューマンドラマにおいては、『あるスポットを浴びた登場人物の感情が、AからBへ変化するまで』の事をさしておりました。

それでは、実際にどのようにして、この『シーン』というものを書いて行けば良いのでしょうか?

……と、今回はそのようなお話をさせて頂ければなと。


↓最初の記事。





シーンが持つ、プロットに関する役割

物語は、『共感』を得るためのもの

さて、プロットを書く上で重要な、『シーン』を考えようという、このコーナー。

シーンとは、感情の変化をさしております。なるほど、それは分かりました。


……ところで、どうして『感情の変化』が重要なのでしょうか?


これを改めて、考えて行きましょう。

またしても、ドラマにおいてのお話になってしまいますが……古より物語というものは、最も大雑把な括りでは『共感を得るために』作られておりました。いえ、そういった趣旨の物語も多くございました。

こんな出来事があって、こんな問題に登場人物達が直面して、嬉しい。悲しい。

『感動する』とは『心を動かされる』という事であり、それはとどのつまり、『共感する』ということです。

その心情がリアルであったからこそ、人々はまるで現実に起きた出来事であるかのように、物語を扱い――……時には笑い、時には泣き、時には感動しました。

そうして初めて、物語は感動を与えるために、役割を持つことができたのでございます。

「ああ、なるほど」「わかる、わかる」そのように感じて頂けたからこそ、登場人物は命を与えられ、空想の場で自由に動くことができるようになりました。

つまり、感動する物語の根底にあるものとは、『共感』だったのでございます。


共感を得るために、『感情の変化』が必要

共感を得るためには、物語の中で生きている登場人物達が、まるで現実に起こった出来事であるかのように……物事を考え、感じ、行動していく必要があります。

リアルでは、何か起こるたびに人は物事を考え、何かを感じていますよね。

そうです。現実世界では、何かが起こるたびに何かの感情が生まれているのです。

一喜一憂し、日々怒ったり、笑ったりしています。

このリアルを追い掛けたい。

だからこそ、物語の中で『感情の変化』を起こす必要が出てきたのでございます。


それでは、どうやって『感情の変化』を起こしていきましょうか?


……これは結構、大きな問題でして。それを追い掛けるためには少々、演技の知識を持つ必要がございます。

それも合わせて、見ていきましょう。


感情の変化は、『行動』と『条件』によって生まれる

さて、感情の変化と聞くと、なんだか登場人物が喜怒哀楽して、色々な表情を見せれば良いような気がして来ますが……実はそれでは、リアルな変化を作ることができません。


ここでは、現実世界で感情が変化する様子を追い掛けてみましょう。


ケース1

たとえば、あなたが今、最寄り駅に立っていたとしましょう。つい先程までは晴れていたはずなのに、駅に辿り着いてみると、雨が降って来ました。

勿論あなたは、傘を持っていません。……そうすると、どう感じるでしょうか?

「あーあ、傘持ってきてないよ。まいったなあ……」

人によって勿論差は出てきますが、大体はこんな所でしょう。

これが、感情の変化です。

……と言われても、何のことやら分かりませんね。そこでもうひとつ、ケースを増やしてみましょう。


ケース2

たとえば、あなたは帰り道、ケーキを買って帰ろうとしています。お気に入りのお店でケーキを注文すると、おまけで店員さんが、シュークリームを追加してくれました。

いつもは貰えないおまけを貰えた時、どのように感じるでしょうか?

「ラッキー。帰ってからの楽しみがひとつ増えたな」

人によって勿論差は出てきますが、大体はこんな所でしょう。


さて、ここには2つの共通項がございます。


そのうち1つは、あなたが「帰ろうとしていた」「ケーキを買おうとしていた」という、『行動』の部分にあります。

もう1つは、その『行動』に対し、「雨が降ってきた」「おまけでシュークリームがついてきた」という、『条件』がありますよね。

これが、感情の変化を起こすために必要なものです。


感情の変化を起こしたいなら、『条件』を操作しよう

さて、感情の変化を起こすためには、『行動』と『条件』が必要なのでした。

しかし、時には起こしたい感情の変化が、通常よりも激しくあって欲しい場合がありますよね。

「ここではすっごく嬉しがって、ここではすっごく絶望する」

……むしろ、物語ってそんな事ばかりですよね。平坦だと、あまり面白くないですし。

ここでやってしまいがちなのが、「楽しい感情を出そう!」「悲しい感情を出そう!」と頑張ってしまい、感情そのものに目を向けてしまう事ではないでしょうか。

「ここで、悲しい気持ちをMAX展開して涙を誘う!」


しかし、これは間違いです。


現実世界では、生活していて「悲しい感情を出そう!」……なんて、思いませんよね。なので、これは理に適っていない行動なのです。

では、どうすれば良いのでしょうか?

これも、例にしてみましょう。


ケース3

あなたは、毎年開催されている、とある資格試験に挑戦している最中でした。この資格試験に落ちてしまうとしたら、どうでしょうか。

「あーあ……今回は駄目だったけど、次はがんばろう」

こんな所ではないかと思います。

しかし、これでは演出上、駄目だったとしましょう。

もっと、落ちた時の絶望感が欲しい! ……という内容だったとすれば、どのように考えれば良いでしょうか。


「お、落ちた……。俺の人生は……一体、なんだったんだ……」


……と、ただこんなセリフを書いたとしても、あんまり説得力が無いですよね。人生と言われても。別にまた、来年受ければ良いではありませんか。

こうなると、「なんか、やたらテンションが高いな……」と。読者様の中には、こんな反応になってしまう方もいらっしゃるでしょう。

人によっては、「え? 全然普通じゃない?」と思う方もいらっしゃるとは思いますが。どちらかと言えば、それは感受性豊かな方でしょう。

でも、以下の『条件』が追加されていたとすれば、どうでしょうか?

ケース4

  1. この資格試験に合格すれば、既に会社の内定が約束されていた。
  2. 資格試験を受けるため、わざわざ田舎から東京へ出て来ていた。
  3. 受かれば東京で暮らして良いが、落ちたら帰って来て農業を手伝え、と両親に言われていた。
  4. なんとかして合格して、家を出たい。そのため一年間、ろくに友達とも遊ばずに勉強していた。
合格すれば、東京で一人暮らし。落ちれば田舎に戻り、二度と東京には出られません。ところが、試験に落ちてしまいました。

それでは、どうぞ。


「お、落ちた……。俺の人生は……一体、なんだったんだ……」


このように、前提条件が変われば、登場人物の反応が変わります。

読者様と書き手側の認識、つまりギャップを埋める事ができます。

これが『条件』を操作する事による効果です。

激しい感情に納得感を持たせたければ、『条件』の方を操作しましょう。目先のセリフをいじっても、説得力はほとんどありません。

ちなみにこれは、演技に説得力を持たせる時の技術と共通しております。

演技をする前の『条件』を操作して、実際に演技をする時には『行動』だけに集中する。

こうすることで、自分の感情を意のままに操ることができるようになるんですね。


シーンを作ってみよう!

まずは、『変化』を追いかける

それでは、実践編に進みましょう!


まずは、作りたい物語の中でキモとなるシーンをひとつ、思い付く所から始めましょう。


テーマは何でしょうか? どのようなお話を作りたくて、どのような感情の変化を起こし、共感を誘いましょうか……?

感情の変化に注目することで、この『ヤマ場』のシーンを思い付く事ができるようになります。

ヤマ場は、大きな感情の変化です。多くの場合、作中で最も大きな変化となる事が多いでしょう。

まずは『条件』の事は視野に入れず、どのような感情の変化をターゲットにしたお話を作りたいのか、そこを中心に考えましょう。

ここでは多少、大袈裟でも大丈夫です。


必要な『条件』を洗い出す

さて、「これはちゃんと見せられたら、面白いシーンになるぞ……!」と確信を持った、ひとつの大きな感情の変化(になる予定)のものを思い付く事ができたでしょうか。

これを考えられたら、次のステップに進みます。たった今思い付いたシーンに説得力を持たせるため、『条件』はどのようなものにしたら良いのかを考えましょう。

どんな状況下であれば、そのシーンが成立するでしょうか?

どんな出来事が起こったら、そのシーンが成立するでしょうか?

『条件』と一緒に『行動』にも注目してみると、新たな発見があるかもしれませんね。

意外と、条件と行動はセットになっていて、行動を変える事でも登場人物の反応が変わる事があります。

この2つに注目していると時々、登場人物が勝手に動いてしまう事があります。

一度それを経験したら、その感覚を意識してください。うまく『条件』を操作することで、自然に登場人物が動くようにしてあげましょう。

慣れてくると、全てのシーンで勝手に登場人物が動くようになってきます。


前提条件から、過去の『シーン』ができる

さて、この『シーン』の作り方を意識していると、ふとある事に気付きます。

「このシーンを成立させるためには、手前でもうひとつシーンがなければ成り立たないな……」

『条件』に注目することで、過去にどんな事が起こっていなければいけないかが明確になります。

そして、そこには『起こったであろう出来事が実際にお話として明記されていなければ、理解できない感情の変化』というものが存在することに、気付くことができるでしょう。


このようにして、『シーン』は連続します。


言い換えると、『シーン』が連続するということは、『お互いに関係性を持った、両方が存在しなければお話として理解できない感情』を表現していることになる、という事でもあるのですよ。

ここまで来られれば、物語の内核はほとんどできたようなものです。

物語を書く上で最も必要なのは、世界観でも登場人物でもなく、この連続した『シーン』を作れるようになる技術だったのです。


まとめ。

……さて、そろそろ私が「起承転結や三部構成などは、後で身に着けても構わない」と言ってきた理由が、お分かり頂けるのではないでしょうか。

プロットにしても箱書きにしても、なんとなく全体像を記述するのではなくて、このように細かく噛み砕いていくことで、より納得できるストーリーを作る事ができるようになります。


さて次回は、ようやく作る事ができるようになった1つのシーンを連続させ、物語を始めから最後まで作るためには何を考えなければいけないか、といった事について書いて行ければと思います。

説明下手で申し訳ございませんが、もう少しだけお付き合い頂ければ幸甚でございます。

それでは、お後がよろしいようで。



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