浮遊する無名作家の浅慮

会社のストレスに負けそうなら、『凪のお暇』を読もう。【漫画レビュー】

凪のお暇 1 (A.L.C. DX)
凪のお暇 1 (A.L.C. DX)
posted with amazlet at 18.02.05
秋田書店 (2017-06-16)


ヘヴィ…………!!

えっ、元手100万リセットコメディ? コメディだと……!?

思わずそんな気持ちになってしまったこの漫画。コナリミサト先生の、『凪のお暇』でございます。

campionタップで読める内容は、確かにほのぼのとしていて、ふわふわゆるっとした内容ばかり。だからそんなに気に留めていなかったのですが、どうも嫁様が随分と気に入られているようでして。

何にそんなに惹かれているのかなあと思っていたので、試しに単行本を買って読んでみたのですが。……これがですね、単行本の方は、がっつりドラマでございました。

良い意味で予想を裏切られてしまって、大変面白かったのですよ。まだ完結していないので、この先が非常に気になります。

今回はそんな、『凪のお暇』という漫画の紹介でございます。





じわじわくる。いや、キツさの方が。

いやー。読んですぐに感じ始めたのは、「うわっ……これキッツい」という感想でした。

この物語は会社からドロップアウトして人生をリセットするお話ですので、やはり会社に居る所から話が始まるのですね。そこで、主人公が会社で最も大事にしているのが、『空気を読んでいこう』という姿勢でした。

これがですね、現代社会人として生きる人間には非常に、よく刺さる。刺さるメッセージなのではないかと。私もですね、どちらかと言えばKY、空気が読めない方に部類されるものですから、こちらは非常によく分かります。

空気を読むのって大変ですよね。

そして空気を読んだからといって、楽になるという訳ではない辛さよ。

面倒事を自分一人に押し付けられた経験。強く人にものを言えない人ほど、似たような想いを感じる方も多いのではないでしょうか。

そんな主人公の凪ですが、やはり無理をして生きている手前、やがて限界が生じます。そこまでがプロローグ……なのですが、これがキッツい。

共感できる。それだけに、読んでいる私への精神的ダメージが大きい。

しかしながら、怖いもの見たさでページを捲ってしまうのですよね。ドロップアウトしてからは比較的穏やかで癒される日々なのですが、やはり過去を完全に断ち切って、ただただ人生リセットする訳にはまいりませんよと。

人生リセットするまでもドラマ。人生リセットしてからもドラマ。

この『人生リセット』というイベントを通じて、非常に重厚なドラマが巻き起こっており。私は是非ですね、この部分に注視して物語に触れて頂きたいと。そのように思うところで。

時には気が滅入りながらも、やはり癒しがあり。救いもあります。救いがある中、やはり気が滅入る出来事もあり……この先どうなってしまうのか。

いやー。なんだか漫画という枠を飛び越えて、主人公の行く末が気になって仕方がない。

どちらかと言えばほのぼのとしている漫画ではないかと予想していただけに、これは大きな変化でしたね。読もうとしている作品をいざ読んでみたら、ジャンルが大きく違っていたというのは。近年、中々ありませんでしたよ。

でもですね。これだけの厳しいシーンばかりでありながら、主人公が前向きなんですよね。

これは大事。

ここに救われるんですよね……本当に鬱なだけだったら、ただ気が滅入るだけで終わってしまいそうなのですが、この作品はそこが違う。

今を生きる企業戦士に希望を与えてくれそうな感じがします。


細かく練られた登場人物と、計算されたシチュエーション。

もうひとつ取り上げたいと思うのは、この作品のシーンづくりがですね、非常に見事なところです。

あるシーンを二人の登場人物から眺めて、それぞれが違った思惑で行動していて、擦れ違ってしまう。この作品ではそのようなシーンが幾度となく登場するのですが。

これがですね……作りたい! と思っても、いざ作ろうと思うと中々どうして、簡単な事ではないのですよね。

2人分の心境を考えて、それぞれの登場人物から見たシーンの在り方が、それぞれ異なっているという展開。それが達成されると、一つのシーンに深みが出ます。

多面的に物事を見なければならないシーンというものは、やはり人の心を揺さぶりますよね。『2人がもし分かり合えていたなら、こんな事は起こらなかった』……そう思わせると思わず登場人物に惹き込まれてしまい、グッと共感が増すものだと思います。

登場人物もそれぞれ動き出しますし、そういった意味で若干のワクワク感もあったり、などなど。

しかしながら、それを作るためにはやはり、『性格の異なる2人の登場人物を、リアルに描かなければならない』という条件が付きます。


これを一人孤独に考える事の難しさよ……!


登場人物ごとに書き分けなんかできて当然じゃないかと、思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかしですね。書いているのは一人なものですから。どうしても共通項とでも言いましょうか、そういった要素が出て来てしまうものだと思います。

『登場人物が正しく判断できてさえいれば、擦れ違わずに済んだ』と……このような段階では、まだまだ惹き込まれる擦れ違いには程遠く。

『それぞれの視点から判断した結果、まったく当然のように擦れ違ってしまったのだ』という事が、納得できる形で現れて来なければいけません。

そこがですね、この作品はパーフェクトなのです。すばらしいのです。

だからこそ、みんなちがってみんないい。一人一人、明確に違った登場人物として物事を考え、そこに個性が生まれているのですよ。

私はですね、そんな部分をおすすめさせて頂きたい。




何にしても、アレですねえ……こういった作品が世の中に出て来るという事そのものに、なんだか時代性と言いますか、ジェネレーションとでも言いましょうか。そのようなものを感じてしまいますよ。私は。

ブラック企業。ほにゃららハラスメント。株式会社を中心とした人の輪には、どうしても闇があるものですねえ。

そんな訳で、おそらく社会人として(サラリーマンとして?)働いていらっしゃる方には、共感できる部分が数多くあるのではないかな、と。

少なくとも私はですね、この漫画を読んで少し泣きそうになってしまいましたよ。

共感の力とは、すごいものですねえ。

見た目のほんわかさからは想像もつかない程ヘヴィ。そんなこの作品を、どうか手に取ってみて頂きたいなと。

ところで、私も過呼吸になった事があるのですが、あれのキツさは本当に半端ないですよね。客先で倒れそうになってしまった時はどうしようかと思いましたよ。

出来る事ならば、ストレスのない社会人生活を送りたいものですね。

お後がよろしいようで。



凪のお暇 1 (A.L.C. DX)
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秋田書店 (2017-06-16)

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