浮遊する無名作家の浅慮

『仕事は楽しいかね?』は、ビジネスとアートの融合ではないか。【ビジネス書レビュー】

仕事は楽しいかね? (きこ書房)
きこ書房 (2015-01-20)
売り上げランキング: 3


デイル・ドーテンという方の『The Max Strategy』という本を日本語訳した、『仕事は楽しいかね?』という作品のレビューです。

いやー。久しぶりに、2回以上読む本に出会ってしまいましたよ。

とても有名な本ですが、有名なだけに敬遠するというあまのじゃくっぷりが災いし……今まで、この本を手に取る事はありませんでした。

改めて読んでみると、これ程素晴らしい本が他にあるかという位に。社会人であれば、読んでみて役に立たないという事は殆ど無いのではないでしょうか。いえ、やはりケース・バイ・ケースだとは常々思いながらも。

私もビジネス書や自己啓発本の類はなんだか好きでして、人生においてどれ程役に立つのかと言えば眉唾物な本も実は結構あったりするのですが、読むこと自体が好きなのでつい、読んでしまいます。

そんな中、これ程に分かりやすく、成功のための哲学を語った本が他にあっただろうかと感じる位には分かりやすい。それはおそらく、ストーリーだからなのでしょう。

そもそも、話が面白いのです。主人公は35歳の社会人。異常気象の雪が原因で飛行機が飛ばず、空港で待ちぼうけする羽目になってしまい、そこで老人と出会う……という、重厚で期待感のある語り出し。

どうでしょう。これぞ、ビジネスとアートの融合ではないでしょうか。

そんな『仕事は楽しいかね?』という本について、今回はご紹介させて頂ければと思います。





 問題定義から解決までの、鮮やかなストーリー運び。

なんだか今、ビジネス書としての感想を書けばいいのか、小説としての感想を書けばいいのか、どちらに寄れば、という所で若干迷っておりますが。どちらにしても素晴らしい本である事には変わりはないので、素直な気持ちを語ってまいりましょう。

まず、この本は物語という構成を取っているもので。やはり主人公というものが存在し、その主人公は悩みを抱えております。それは、日々の仕事に追われ、未来に希望が見い出せないこと。

真面目に一生懸命働いているのに、一向に出世できない……。

そんな主人公の所に現れたのは、一人のご老人でした。彼は、おもむろに主人公へと歩み寄ると、主人公にこう問い掛けます。

「仕事は楽しいかね?」

……と、このように問題定義があり、それを悩んで話すことで解決に向かっていく様は、やはりこれはヒューマンドラマの一種ではないかと。そのように感じます。

『成功したければ○○をするべき』『成功している人は皆、○○をしている』といった語り口のビジネス書はたくさんありますが、この本がそれらと同一に扱われないのは、やはり共感できる、という部分にあるのではないでしょうか。

社会人であれば、誰もが持っていそうな悩みでもあります。そういった事柄にストレートに問いかけてくるご老人。

「なんでも好きなように試してみるべきだ」といった、一見抽象的な言葉に主人公も悩んでしまいますが、これがラストに向けて進んでいくにつれ、絡まっていた糸がほどけるように、次々と胸に落ちてくるのです。

いやー。この部分がですね、やはりおもしろい。分かっていても、つい先を読みたくなってしまいました。

やがて、ご老人の言っている言葉の意味が分かると、主人公の見えている世界が180度変わってしまう。そのような未知の体験にあたかも居合わせたかのような、不思議な感覚がございます。

ぜひ、この感動を味わって頂きたい。この本にはですね、様々な驚きがありましたよ。



 私がこの本を2回読んだ理由。

さて、私はですね、ついこの本を2回も読んでしまったのですが。

その理由は、やはり一度読んだだけでは、前半に含まれている様々なメッセージを読み取ることができないからでした。

物語が終盤へと進むにつれて、ご老人の言っていることの意味が理解でき始めると。そうすると、本当は前半でも重要なことを幾つも話しているのに、その意味を理解することなく終わってしまったのです。

なんとなく……分かったような……気がする。でも、いまいち覚えていない。

やはりこれは、もう一度確認しない訳にはいきますまい……!!

結果は……ええ、やはり、読んで良かったなあと思うばかりでございます。

2回読むことで、この本に仕込まれていた沢山のメッセージのうち、重要な部分は理解することができたのではないかと。今のところ、そのように考えているのですが。

なにしろ、かの有名なコカ・コーラ誕生の話やリーバイスの話、アップルとマイクロソフトの話など、日本人にとっても馴染みのある話が多く。それらを通じて語られるメッセージは膨大で、これを理解するためには何度も読まなければならないと。そのように感じたのです。

いや、確かにひとつひとつは知っているんですよ。ジョブズの話もマイクロソフトの話も知っていたし、コカ・コーラがどうやって生まれたかというのはそりゃあもう有名な話で、知っている方も多いのではないかと思うのですが。

この本のすばらしい所は、これら成功した企業のサクセスストーリーが、単なる成功体験に留まらず、『何故成功したのか』という観点で考えられ、意見が統一されている所だと思います。

問題解決までのケース・スタディが一度に並べられ、共通項がまとめられている。これがやはり、大切なのではないでしょうか。

改めて、まだ世の中に出回っていない何らかの技術を会得するためには、沢山のトライ&エラーを通じて、成功した部分と失敗した部分に分けて行くしかないのだなと。今では、そのように考えております。






結局、このお話の中身を語ろうとすると……どうしてもネタバレになってしまう部分が多く。

中々紹介するのが難しいなあ、とこうして記事を書きながら、今もなお考えております。

やはり、この本の素晴らしさは一度、その手に取って確認して頂きたいと。そういった私の感動もあり、こうして紹介させて頂いているのですが。

単なる箇条書きでは味わえない感動。やはりこれは、物語の持つ、ひとつの力なのではないかなと。ストーリーを作る事を研究していて本当によかった。私にも、この作品の素晴らしさが理解できます。

ふとお時間が空いた日、とくに空港で待っている時などに開いてみてはいかがでしょうか。

もしかしたら、人生観が変わるかもしれませんよ。いいえ、決して誇張表現などではなく。

この本がより多くの人に届くよう、陰ながら願っております。

お後がよろしいようで。



仕事は楽しいかね? (きこ書房)
きこ書房 (2015-01-20)
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