浮遊する無名作家の浅慮

『メイドインアビス』のアニメ続編が制作決定という事らしく。【漫画レビュー】

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でも、つい最近まで知らなかった。そんな、つくしあきひと先生の作品でございます。

私ですね、アニメになってようやくこの作品を知りまして。

ようやく漫画を買って読み始めているのですが……いやー、これがですね、面白い。人気になる理由も分かります。しかもアニメ第2期制作決定らしいじゃないですか。いいぞもっとやれ!

『ファンタジー』と括る作品は現代日本において非常に多く、特に漫画やライトノベルの世界などでは、もはや中世ファンタジー的なものが一つの大きなジャンルとして存在している位でして。

そう考えると、やはり時代はレッドオーシャン。俗に言う、大海賊時代というものを迎えているのではないでしょうか。石器時代→縄文時代→大海賊時代的な。

そんな中でも、ひときわ異彩を放つ、この作品。私は本屋に並んでいても気付く事がなかったために、このように遅れての閲覧となってしまいましたが。

まずですね、ストーリーがすばらしい。こんなによく練られている作品は、数あるファンタジー世界のそれを鑑みても、中々お見かけする事はありませんね。

今回はそのような、『メイドインアビス』についての魅力を語らせて頂ければと。これ幸いであると。

知っている方からすれば、「いや今更かよ!」という感じだと思うのですが。私のようにアニメや漫画が好きながらにして、まだこの作品を知らないという可能性も。やはり、あるかもしれないと思う所ですので。





 考え抜かれた世界観と、細部まで表現されているキャラクター。

まず、非常に舞台設定の内容が濃く、そして秀逸だなあと感じます。

『アビス』と呼ばれる巨大な縦穴に向かう、沢山の冒険家。その巨大な縦穴には様々な階層があり、それぞれで独特な世界を構築している、というもの。

行く先々で、それまでとは完全にがらりと印象を変えてしまう……住んでいる生き物や植物に違いがあるといった様子は、某海洋冒険ロマンでもふんだんに使われている手法だと感じるのですが。どうにもその作りが丁寧で、惹き込まれてしまいます。

良いなあと思うのは、その巨大な縦穴、『アビス』を覆う、『アビスの呪い』と呼ばれている現象についてのこと。

これは、『行きはよいよい帰りはこわい』といった仕組みになっており、アビスの深層へと進むごとに呪いは強くなっていきますが、その呪いが発動されるのは『上がる時だけ』といった制約があり。

これが物語の中核を担っており、重要なドラマの要素として存在しているのです。

ポップでキュートな登場人物もさることながら、こういった人間の生き死にに直結するようなシビアなドラマがある所が、この作品の魅力なのではないでしょうか。

実際ですね、アビスへと潜っていくのは小さな子供という設定なのですが。大の大人でさえも苦痛を感じるような、或いは死んでしまうような『アビスの呪い』という過酷な状況が過度な緊張を生み、物語に締まりを与えているように感じます。

いやー。どこかへ冒険する話、旅をする話というのは、この『スリル』が欠かせない要素だと思うのですよ。スリルのない、緊張感を生まない冒険物語というものは、やはり他に楽しめる要素がなければ、読んでいて苦痛になってしまう事が多いのではないでしょうか。

それを鑑みると、やはり可愛らしい絵柄でありながら、こういったスリルがあるということ。それは、先に進む物語の重要度に影響を与え、ページを捲るための原動力にもなるのではないか。

そのように、私は考えているのですが。



 シナリオ運びの慎重さと、その細やかさに感動。

特に、冒険物語に限らずといった所だと思うのですが。長いお話を作る上で気にしなければならない重要な要素の一つとして、『既視感が生まれる構成にしない』といった要素があるのではないかと思うのですよね。

どこかで見たような話にしない。或いは、同じ構成を使い回さない。

特に、ひとつの長い物語の中で既視感が生まれる構成にしてしまう事は、はたから見ると『手抜き』や『引き伸ばし』といったように感じられてしまい、ひどく嫌悪されやすいものではないでしょうか。

しかしながら、これが書き手としては逆に、長い話になればなるほど、既視感を生まない構成にすることは非常に難しく。時間がかかり、頭を悩ませるものだと思います。

そう考えると、この作品は壮大な世界観の部分が作り込まれているからなのか、それとも先に進むごとに違った危機が訪れるように、作品全体のコンセプトが定まっているからなのか、似たようなシーンというものがほぼ存在しないといった秀逸さを持っており。

やはりですね。これが私としては大変おもしろく、そしておすすめさせて頂きたい理由にもなっているのですが。

登場人物は丁寧に描かれているので、ぽこぽこ増えたりはしないんですよ。しかしながら、その登場人物のディテールが先へと進むにつれて、よりはっきりと見えてくるのだと。

話が進めば登場人物に対しての見方も変わり、舞台も変わり、よりハードで手が震えるような未来が待っています。時には痛々しい展開もあり、もう見るのが嫌だと片側では思いながらも、怖いもの見たさでつい先へと進んでしまう。

絵本のような作風でありながら、決して平坦ではなく、アップダウンの激しい物語になっていて、しかもそれが重複しない。既視感を生まない。

なんだか書きたい事が多くてうまくレビューにならないんですけれども、とにかくそんな所が好きだなあと。私は思います。




しかし、ひらりとかわすようなジョークと軽いタッチの作品が増えていく中、このように重厚でかつ読みやすい作品も増えていくというのは、非常に嬉しいですね。

気楽に読めるのも良いのですが、やはり緊張感を持って作品を読むというのも。結構、好きなもので。

やはりですね、私はメイドインアビスの世界観。そして、ストーリーの作られ方に感動を覚えましたよ。

細やかな演出、気配りの効いたお話が読みたいという事であれば、是非にとおすすめできる作品だと思います。

アニメの続編も絶対見ます!

お後がよろしいようで。



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