小学館 (2015-05-15)
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ということで、今回は小学館ビッグコミックスペリオールから、柳本光晴先生の作品でございます。
……なんと言いますか、良くも悪くも(?)未だ嘗て無い衝撃を覚えていると言いますか。
なんと感想を書けば良いのか非常に悩んでいるという次第で。
それでも記事にしようと考えたのは、やはりこの作品が今後、沢山の作品に強い影響を与えて行くのだろうなあ、と感じるからでして。これは、紹介しない訳には行きますまい。
百聞は一見にしかず。マンガ大賞2017のトップを飾る作品です。やはり、一度は読んで頂きたいな、と思う所です。
いつもは『この作品のここが魅力的! ここが面白い!』というスタイルで通している私なのですが、この作品は非常に多面的な要素を含んでおり。
少し分かりにくいレビューになってしまうかもしれませんが、何卒ご了承頂きたいなと。
あとですね。今回は、細かく作品の内容を書くが故に、ある意味ネタバレに近いものがあると感じておりますので、先に提示しておきます。
ネタバレを不快に感じる方はブラウザバックをお願いいたします。
むしろ、本作を読んでから記事を読んで頂く方が、共感的な目的で楽しめるものかもしれません。
やはり人によるのでしょうけれども……。
めちゃくちゃ強烈なテイスト。頭が痛くなる程の、個性の強さ。
何から取り上げるべきか悩むのですが、やはり舞台設定が強烈です。主人公の鮎喰響はひとたび文芸作品を書くと、誰が読んでも面白いと思わせる、圧倒的な天才。ただ、あまりに自分に素直過ぎるが故に、周囲を困らせてしまう程の常識知らずという。
そんな響を中心として、文芸界に様々な波乱が起こっていく……というのが、本作のメインテーマではないでしょうか。
ただ、その『自分に素直』というのが、これはもうあんまりにあんまりな素直さで。人の作品を「つまらない」「ゴミ」と貶すのは当たり前、ともすれば暴力も厭わないという強烈な態度で、売られた喧嘩は絶対に買うのだと。そんな性格の持ち主です。
そんな響の周囲に集まって来るのも、鬼才の子供で才能の塊なのに響との差を見せ付けられるばかりの祖父江凛夏。
異常なまでの響への愛で埋まっていて、もはや響との未来まで思い描いているという幼馴染の椿涼太郎。
ある意味最もマイペースに作品を愛している、ラノベファンの関口花代子。
……とまあ、沢山の登場人物が出て来るので全部は書けないのですが、ちょっと他所の作品では中々お目に掛かれないような、光と闇が一体になっているキャラクターが沢山登場いたします。
『光と影』ではないんですよね。『光と闇』。読んで頂けた方ならきっと、分かって頂けるはず。
私はですね、響だけではない沢山のキャラクターに、若干の狂気さえ感じましたよ。
まったく個人的な想いで恐縮なのですが、人の後ろ暗い心を取り扱った悲劇や、どこかアングラ演劇のそれに近い感情をも取り扱っているような気がしてしまい。
だから、感想を書くのが非常に難しいのですけどもね。
『天才』と呼ばれる人達の扱い方。
この作品では、『天才』は物事を達成するのにあまり苦難を覚えず、障害など無いかのように次々と壁を突破していく存在のように描かれています。他の人間がもがき苦しむ中、別にさして興味が無いとも取れるような態度、何食わぬ顔で隣を歩いて行く響。
そんな響に影響され、周囲の『凡才』達は変わって行きます。
或いは挫折し、或いは高い目標にし、或いはそれに金の匂いを嗅ぎ付け……といった空気で。
そんな状況を見ると、主人公はむしろ主人公と言うより……ラスボス? ではないか。
他作品と違うなあと思うのは、よく見る『天才』は、『センスのある、物事に一生懸命取り組むと鬼のように成長していく、成長力の塊』として描かれる事が多いように感じるのですが。
この作品における本当の『天才』は、『始めからレベル100で、他の何者も寄せ付けない位凄まじい』といった風に描かれているのです。
似たような設定だと、荒川弘先生の『鋼の錬金術師』を連想しますが、豊富な経験を持っていながらもストーリーに翻弄されるエドワード・エルリックに対し、もはや響は完成されていて、当たり前のように誰にも劣らず、成長の余地すら無いようす。ここに大きな違いがあります。
ドラゴンクエストで言う所の、勇者ではない。竜王なんですよね。
これがですね。響の暴力的で素直な性格と並んで、物凄く両極端な評価になりやすいのではないかと、私は考える所でして。
どうして若者の素直な非難が社会で嫌われるのかと言えば、やはりそれは結果を追い求める現代社会人にとって、解決策を提示しない非難というのはやはり愚直で、役に立たないからだと思うんです。
それが「意味がないものなんだ」と感じた時、やはり人は課題に対する解決を求めるようになると。
すると、その解決策を得るまでの過程が非常に難しいものだと知り、人が努力して作ったものを横から「これはつまらない。クソだ」とは中々、言えなくなってくる。
ところが響は、もう全力でそれをやってしまいます。つまらないものをつまらないと言って煽り、しかもその上で売られた喧嘩すら買いに行くと。
しかもそれで作品が面白いという事なので、提示された方はもうへこたれるしかなく。「ではどうすれば良いのか」といった解決策は、永遠に響からは出て来ません。
でも、響はこの作品の中で、絶対的な存在ということで。
……どうでしょうか。
やっぱり、モノを生み出す苦労を知っている人ほど、嫌がる人はかなり多いのではないかと思うのですよね。
しかし、これはそんな『天才』を中心にした『ドラマ』という側面があり。
言わば、竜王のような『圧倒的なラスボス』『絶対に超えられない壁』というものを前にした普通の人達の、『どれだけ努力してもやはり回答が見付からない様子』というのがドラマになっている。
だから天才はすごいんだ、と。
ここがですね。もう驚く位に完成度が高くて、非常にリアルなんですよ。だから若干の怖い物見たさみたいな感情も相まって、どうしてもページを捲ってしまう。
このような主人公であるからして、主人公側にドラマは今の所……あまり生まれていないのですが、その周囲には溢れるほどのドラマが詰まっている。しかも完成度が高いと。そういう事ではないかと。
いやあ、難しいですね。
という事で、『響 〜小説家になる方法〜』が強烈すぎてやばいというお話でしたが。
ここまで書くとですね、最終的にこんな疑問を覚える方もいらっしゃるのではないかと思いますので、一応私としての結論だけ書いておきます。
では、この作品は面白いのか? それとも面白くないのか?
わかりません!
……ごめんなさい。
人を選ぶ作品である事だけは、間違いないと思います。
響や周辺のキャラクターに不快感を覚えず、ドラマに共感できる方はきっと、強くのめり込む作品になるのではないでしょうか。
私は好きです!
それを鑑みると、やはりこの作品はマンガ大賞2017を飾るに相応しい作品なのではないか、とも感じます。
その評価は是非、本作を読んだあなたの目で決めて頂きたい。
……しかし私は度肝を抜かれましたね。
多分私には、こういった作品は一生書けないだろうと思います。
やはり天才か……!
お後がよろしいようで。
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