浮遊する無名作家の浅慮

親知らず、抜きたくなかったけど抜歯した理由とその後。

親知らず、抜きたくなかったけど抜歯した理由とその後。

ところで、若者と呼ばれる年齢を過ぎるだろうかと思えるような年代になると、親知らずの事が気になって来ますよね。

一般的には20代前半位の時に抜いておくと良いよという事らしいですが、これが抜かなくても良い場合というものがあるらしく。

調べてみたところ、例えばそれは、顎にきちんと生えるスペースがある場合。

親知らずが正しい方向に生えて来ており、他の歯の邪魔をしない場合。

虫歯になっていない場合。

実は親知らずに、居ないはずの親がいた場合。

……などのケースでは、抜かなくても良いという事があるようなのですが。

あ、最後のはただのジョークなので、どうかお気になさらず。

これらの情報から私、親知らずを抜くことを、つい最近までためらっておりまして。

だって、痛いらしいじゃないですか。

まだ開発されていないので、痛いのは嫌いなんですよね。

「あんまり当たるようなら、抜いちゃった方が早いですけど……」
「いえ。抜かずに生やします」

今回は、そんなお話。



 親知らずを放置していたら、歯茎が痛い。

つい最近になって、上顎の奥歯の辺りが痛むようになりまして。

不思議なものでですね、これは虫歯ではないなというのがなんとなく分かるんですよね。歯茎が押されると言いますか、なんだかジンジンしてきてしまって、「煩わしいなあ」と思うようになりまして。

これまでもちょくちょくそのような事は経験していたのですが、これはですね、放置しておくと一日程度で痛みが無くなってしまうのですよね。なので私、これは歯が生えてくる痛みなのではないかと。

やがて親知らずが生えてくるまでの繋ぎなのではないのかと、そう考えておりまして。

いつの時代も、我が子が生まれる時のようにですね、母体となる人間には激痛が走るものではないでしょうか。

その痛みを克服してこそ愛着が湧くと言いますか。やはり親知らずもですね、巡り巡って世界一周する頃には、そのような要素も生まれるのではないか。

やはりこれこそが、古き良き習慣。茶柱が立つと幸福が訪れると言いますが、これはですね、むしろ親知らずが立つ時なのではないか。

むしろ立つのはクララではないかという。

そのような事を考えながら、親知らずが生え切るのを今か今かと待ち望んでいた私だったのですが。気が付くと、奥歯の痛みというものが、消えないという事実に出会します。

痛むものだという認識でおりましたので、気付くのが遅れてしまったのですね。2日、3日と経つ頃に、「……あれ? そういえば、痛みが続いているなあ」と思うという。

そして、その痛みは気付けば、「煩わしいなあ」という程度では済まされない事になっておりました。

気が付いたのは、寝て起きた頃。朝になって、狼狽える私。今まで一日で消えていた痛みが、何故こんなにも続いてしまうのかと。覆水盆に返らずと言いますが、やはりこれはですね、何かが吹っ切れてしまって、それで痛みが引かないのではないか。

そして私は、これを歯医者様に診て頂く事を決意したのでした。



 いざ、長く行っていなかった歯医者へ。

早速私は電話を掛けました。すると、受付係と思われるお姉さんが電話に出たのです。

「すいません。実は、今朝から歯が痛くてですね……予約をしていないのですが、本日診て頂く事はできないでしょうか……」
「えっ? ……分かりました。では、移動時間はどの位でしょうか?」

きっと、受付のお姉さんは「何だよ。手遅れになる前に予約しろよこのスカタンが!」と思った事でしょう。

私は、続けました。

「車で15分くらいだと思うので……午後2時位には到着できると思うのですが……」
「分かりました。では、2時に来て頂けますか?」

きっと、予約のお姉さんは「予約埋まってんだよ知ってんだろ、仕事増やしやがってこのスカタンが!」と思った事でしょう。本当にいつも、迷惑を掛けてしまって申し訳ありません。

是非、ここはジャンピング土下座をさせて頂きたかったのですが。残念ながら電話だったので、謝る事しかできませんでした。

車で移動すること15分。目当ての歯科に到着すると、早速私の名前が呼ばれます。以前に撮影した写真を前に、実際に口を診てもらうと、お医者様は言いました。

「斜めに生えて来ちゃってますね。……もう、抜いた方が早いんだけど」

お前何年前から言わせるんだと言わんばかりの顔をするお医者様。前から言われていたのに、頑なに「いえ、残してください」と言い続けた私。斜めに生えて来ているという事実に、思わず苦い顔をしてしまいました。

実際には、苦笑するしかなかった、というところで。

「じゃあ、抜いて頂けますか……?」

そう問い掛けた所。

「はあ? お前、前は抜かないとか言ってて、痛み出したら抜くのかよ。親知らず舐めてんじゃねえよ」

とは、流石に言われる事もなく。

『ああ、やっと抜ける』という顔をするお医者様。余程、私の親知らずが煩わしかったようです。

まあ、親を知らない訳ですから。相応に生意気かもしれない訳で、そこは仕方のない事かもしれません。

はいっ、麻酔しますねー。痛くないですか? ちょっと嫌な音しますよ。ゴリッ。メキャッ。はい、軽くゆすいでください。これ噛んで。

ものの10分で終わってしまい、ロビーに戻される私。な、なんという速さだ……。お医者様の前世は、もしかすると飛脚だったのかもしれません。

痛みも全く無く。私はメントールを口にした時のように爽快な気持ちで、ロビーで待つ嫁様の所に歩いて行きました。

「もう終わったの?」
「ふぁっふ、ふぁんふぁんふへぇ」
「ごめん、何言ってるか全然わかんない」
「ふぉふんへ」
「もう黙れよ」

気持ちだけは。……だって、ガーゼを噛んでいるんだもの。

その後、お医者様は私にこう言いました。

「明日にはもう痛みも出ないと思うので、必要なら痛み止め飲んでください。一週間後にまた来てくださいね」

痛み止めが処方され、私は家に帰った、という次第なのですが。


 抜歯後の痛みについて。

その日は車で帰ろうと思ったのですが、実家の両親に呼ばれ、一度嫁様を家に帰し、私は実家へ。

すると、麻酔が切れた後に少しずつ発現する痛みが。これはまるで、毒か何かのよう。ポケモンには毎ターン毒のダメージが倍々になっていく『どくどく』という技がありますが、まさにこれはそのような気分ではないかという。

毒タイプには毒が効かないので、やはり私は苺タイプだったのでしょう。

親戚の方を送り、買い物に行きたいという両親をデパートまで連れて行く頃には、私は中々に過酷な痛みと戦っておりました。

激痛ではない。しかし、痛い。

帰って飯を食べた後に、早速痛み止めを飲み。明日になれば痛みもおさまっているという事で、シャバダバダ、早めに就寝。

そして、翌日。

痛い……のか? 痛くないのか。……いや、痛い。痛いじゃないか。

激痛ではない。しかし、痛い。

あれ? ……これはやはり、事情は同じではないか。

ということで、3日ほどは痛みがおさまりませんでした。お医者様の言う『痛みが無くなる』というのは、痛みに過敏すぎる私にはあまり効果を伴わなかったようす。

しかし、痛み止めを飲むほどではない。という事で、じわじわと痛む歯茎に耐える事になります。ご注意を。

なんでも、上顎よりも下顎の方が痛みが強いらしいですね。私は下顎には親知らずそのものが無いらしく、抜こうにも抜くものがないとの事なのですが。

痛くないと言われている上顎でこのような状況ですから、きっと下顎の痛みは計り知れないものなのでしょう。

思わず、合掌してしまいます。

あ、あとですね、元々親知らずが刺さっていた部分が、歯茎の中にポケットのように残るのですが。

ここに食べ物が挟まってしまい、掃除が大変になります。

「歯ブラシで取っちゃってください。その方が、治りが早いと思うので」

とお医者様は言いましたが、正直、ゴリゴリやっても取れません。不器用な私には難しかったので、その点ご注意お願いできればと思います。





しかし、親知らずを抜かないというのもあまり聞きませんので、やはりいつかは抜かなければならない時が来るのかもしれませんね。

私は念入りにブラッシングをしていたつもりだったのですが、斜めに生えていた親知らずは、磨けなかった臼の部分がひどい虫歯になってしまっており。

そのような要素からもですね、やはり抜いた方が良いのではないかと思う所なのですが。

抜きたくない理由は、やっぱり痛いからなんですよね。

私のように、途中までは普通に生えて来ていたとしても、やがて斜めになってしまうケースもありますので。まだ抜いておらず、抜きたくない方は、やはり半年に一度は定期検診を受けるようにした方が良いのではないかと。

最近では、そのような事を考えております。

「ところで、嫁様はもう親知らず抜いたの?」
「……まだ」

お後がよろしいようで。


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