「滑舌がどうしても良くならない。大きな声で発声しているのに、聞き取って貰えない……」
そういった悩みをお持ちの方も、やはり多いのではないでしょうか。
私の会社にも、滑舌に難がある方がいらっしゃいます。
長い事一緒に働いているもので、もはや慣れてしまって……今となっては、聞き取れないという事は無くなっているのですが。
入社当時、私が会社に電話をするとですね、たまに彼が電話に出る事がありまして。
「おにゃむにゃあいがとうございます、〇〇〇(会社名)でございます」
「えっ?」
こんな感じで聞こえてしまうのですよね。
喋るのが早すぎて、音が省略され過ぎてしまっているのも原因だと思うのですが……何より、音が潰れてしまっており。
本人はきちんと喋っているつもりでも、聞き取って頂けない事もしばしばです。
加えて受話器を取る前から話し始めているので、正直言うと繋がった時には
「ざいます」
しか聞こえない事もあり。
これでは、何が何やら分からなくなってしまいますね……。
お客様も困ってしまって、「あれはなんとかなりませんかねえ」と相談を受けた事もあるのですが。
ところがですね。その彼なのですが、声はとっても大きいのです。
相手が聞き取れないと、余計に大きな声で話をしようとするので、実は余計に聞き取って貰えない。そのような悪循環が生まれてしまっているのです。
私も昔は、滑舌を良くするためには大きな声で発声する必要があるものだと、考えておりました。
しかし……そうではなかったのですよね。
ここでは、滑舌を良くするために必要な知識と、そのトレーニング方法を公開していきたいと思います。
これでもう、滑舌問題は大丈夫! ……というようにしたいものですね。
『滑舌良く』って、つまりどういう状態なんだろう?
さて、私は役者をやっている訳ではありませんでしたが、舞台脚本なるものを書いていた経験がありますので……滑舌についても、多少の知識がございます。時折役者様の練習にも参加させて頂いた事があるのですが、滑舌の練習は団体によって様々ですね。
しかし、『滑舌が良い状態』というのは、一体どういう状態なんだろう……?
これはひとつ、気になるポイントではないでしょうか。
はっきりと発音しよう! 大きな声で発音しよう!
ええ。確かにそれも、そうなのです。間違いではないのですが。
この、『はっきりと大きな声で』という言葉の解釈が、人によっては『叫ぶほど大きな声で』と認識してしまいがちです。
そうなると、実際に劇場などの遠い距離で聞いてみると、中々自分の台詞が聞き取れない事も多いです。録音してみると、よく分かります。
なんで!? はっきりと、大きな声で発音しているのに!!
確かに大きな声である事は良いことなのですが、それよりも大事なポイントがひとつ、ここにあるのです。
それは、『子音を立てる』ということ。
……もしご存知でしたら、申し訳ございません。
『子音を立てる』とは、なんであろうか。
実際に自分の声を録音して、どこか劇場やコンサートホール、広い会議室などの場所で再生してみるとどうなるか。一度試してみると、よく分かるのですが。「おはようございます。今日は良い天気です」
例えば、このように発言したとしましょう。これを遠くで聞いてみると、こうなってしまいます。
「おあおうおあいあう。いぉうあいいえんいえう」
これが何を意味しているか。
かなり誇張表現してしまいましたが……つまりは『母音』だけが残って聞こえる、という現象が起こってしまうのです。
これは、子音と母音の発声の長さによって起こる現象です。
子音というものがとても短く、一瞬で発音される事が多いのに対して、母音は長く発音されるため、耳に残りやすい。
そのため、母音だけが聞こえてしまう、という現象が起こっているのですね。
そこで、滑舌を良くするために、このようなトレーニングを行いましょう。
「あ・え・い・う・え・お・あ・お」
これは、母音の練習。続いて、か行に移ります。
「k~か!! k~け!! k~き!! k~く!! k~け!! k~こ!! k~か!! k~こ!!」
つまり、『子音を長く発音』してみましょう。
えっ、子音を長く発音するんですか? どうやって? ……と、そのような声が聞こえて来そうですね。
か行の『K』、さ行の『S』、た行の『T』。これらを、まずは強調して発音してみてください。
その後、可能な限りゆっくりと、子音を発音してみる。このような練習を行いましょう。
こうする事によって、冒頭の『母音だけ聞こえる現象』を解消する事が可能です。
子音を立ててみる。
最初は子音を長く発声することが、とても気持ち悪く感じてしまうかもしれません。そんな時は、自分の声を録音して聞いてみましょう。
子音を相当強調したとしても、他者の耳で聞いてみると、意外なほど気にならないという事が、お分かり頂けると思います。
実は、『子音を立てる』という方法で、不快な発声になる事は無いのです。
なので遠慮せずに、子音を目いっぱいに立てましょう。
そのような練習が『あえいうえおあお』で出来るようになりましたら、今度は『外郎売』などを、子音を立てて発声できるように訓練してみましょう。
「せっしゃ、おやかたともうすは、おたちあいのうちに、ごぞんじのおかたもござりましょうが……」
子音を立てる事を意識すると、『S』や『T』などの音に、必要以上の息漏れが発生したり。
鼻に掛かってしまったり、音が濁ってしまったりする事があります。
今度はこれを修正していく事で、より正しく聞き取りやすい発声にしていく事が可能です。
……ここは、終わりなき訓練になってしまうのですが。
毎日このような訓練をすると、滑舌は飛躍的に良くなりますよ。是非、お試し頂きたいと思います。
ちなみに、この『子音を立てる』発声法に抑揚を付け、音に高低を加える事で、歌舞伎の発声法になるそうです。
というのを、人から聞いたことがあります。
会社の営業マンになったりすると、相手に分かり易く説明するトーク術などが重要になって来ると思うのですが。
意外なほどに、人はその人の身振り手振り、雰囲気や見た目の印象などから受ける影響が強く、話の内容はそこまで問題にならないと言われます。
つまり、この滑舌を練習する事によって、話す相手に安心感を与える事が出来る可能性があるという事でもあるのでは……!
ゴニョゴニョ話す方と気持ち良い発声をする方、どちらに好印象を持つかと言えば、やはり後者ですからね。
そう考えると、一般の方でも、滑舌を訓練する価値はあるかもしれませんね。
内容もそうですが、会話の印象で不快感を与える事のないようにしたいものですね。
お後がよろしいようで。
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