私もですね、このような浅慮を書いている身ではありますが、一応一介の人間、つまりは社会人というステータスに身を置く人間でありますので、拙いながらも、様々な方とお話させて頂いた事があるのですが。
そのように日々を過ごしているとですね、これは当然のように、人と人との『認識の差』というものを思い知らされる、という事がひとつ、ございまして。
例えば、あいつとはコミュニケーションが出来ないだとか、社会人として有り得ないだとか、そのような声を聞く事は、多々あると思うのですね。
しかし、それを相手だけの責任にするべきなのかどうか。そのような問題は、これは判定することが非常に難しい。
それ程にコミュニケーションというものは難しく、そしてそのコミュニケーションがですね、特に会社においては、相手の仕事力を下げてしまう原因にも成り得る、という事だと思うのです。
と、今回はそのようなお話をさせて頂ければと思うのですが。
とあるIT系のAさん(仮名)。
『Aさん』が仮名でなかったらむしろ驚きだよ、といった声が聞こえて来そうではありますが。実はこれ、仮名なんですね。どうでもいいですね。
さて、とあるIT系のAさんは、いつだったか私にですね、このようなお話をしておりました。
「自分の会社と関わりのある某派遣会社の人材が、これはひどいんだよ。スキルは無いし、言っている事とやっている事が違ったりする。これでは、仕事にならないよ」
私の目から見ても素晴らしいスキルを持ち合わせている彼ではありますが、どうやら最近関わりのある技術者の方々に対して、これは非常に不満を抱えているご様子。
及ばずながら、私も技術畑に身を置く人間でありますので、彼の話は多少なりとも理解できる所ではあります。
技術的な面は勉強してカバーして行くしかない部分があり、人によって立ち位置やこれまでの経緯は様々だと感じておりますので、やはりどのように不満を抱えていたとしてもですね、現実的には至らない事もあるのではないかと思いますが。
それでも、コミュニケーションが成立しない、といった問題はですね。どうしても、フラストレーションを感じてしまう事がありますよね。
私も、自分の言った事が理解されなかった場合や、相手の言っている事が分からない場合などに……怒りを覚える訳ではないのですが、少し困ってしまう事もございます。
ところで、一方ではこのようなお声も頂いた事がございます。
とあるIT系のBさん(仮名)。
彼女の場合はですね、初めから自分にはスキルが無い状態で入社している、という事を理解しており。だから、今まさにこの場所で学んでいこうよ、という段階だったようです、当時は。そのような状況だったのですが、とある日に私は、このような相談をお受けした事がありまして。
「今のチームで働いている、上司のZさんなんだけど。技術力があるのは分かるんだけど、時々、何を言っているのか分からない事が多くて。その時は理解したつもりで『はい』って言うんだけど、後々聞いてみると認識が違っていたりするの」
なるほど……。確かに、聞き覚えの無い単語や説明ばかりが並んでしまうと、その部分についての理解はどうしても、アバウトになってしまう所がありますね。
その時は『Yes』だったものが、改めて聞いてみると、これは『No』になってしまう。そのような状況なのでしょうか。
全てが全て、このようなお話ばかりだとは限りませんが。この2つの意見から言えそうな事は、『その方面についての理解が浅い人と深い人では、話している内容も異なる』という事ではないでしょうか。
これらを『コミュニケーションスキル』と一括りにしてしまえば、してしまう事ができそうです。しかし、この『認識の違い』が生むコミュニケーション上の問題によって、本来の技術力に影響が生じている可能性も、やはりあるのではないか。
何故なら、多少会話が得意な人間であれば、ほとんどの方が『自分のコミュニケーションスキルには問題がない』と。そう考えているのではないかと、私は感じる所があり。
従って、私はこのように考えたものです。
私個人の失敗から。
私個人の経験からお話するとですね、私もやはり、言いたいことがうまく伝わらずに、困ってしまった経験がございます。「あーいや、ここの条件の定義はですね。AというフラグとBというフラグが、それぞれ0か1かという事で、2つずつのパターンになっているんですね。という事は、合計で4パターンになるはずなんですよ」
よし分かった、といって出来上がってきたものは、3つのパターンからなる条件分岐。ちゃんと資料で提示している筈なんですが、これがですね、どうしても伝わらない。
具体的には、AとBのフラグがどちらも1だった場合の判定処理がない。その時の判定処理も、お客様から送られてきた資料、私が作成した資料のどちらにも、詳しく書いてあるのに。
なぜだろうか。
それでも、相手は技術歴20年以上、これはかなりのベテランの方なのです。「2パターン×2なんだから、4パターンじゃないですか。なんでこんな簡単な事が分からないんですか」と言ってしまうのは、あまりに不毛だと思い。
喧嘩がしたい訳ではない。私は仕事がしたいのです。
いえ、ごめんなさい。正直に言うと、そのお話の前のお仕事で、はっきり否定してしまった事もありました。
しかし、他人の指摘では中々、人は変われないものです。その方の特性と人生経験上、理解されない事もやはりあるでしょう。唯一起きている結果は、彼と私の間では、コミュニケーションが成立していなかった。それだけではないか。
そういう事なのだと、私は思いました。
これを彼だけの責任にするのは、私が責任者である以上、これはあまりにも、お粗末ではないか。
今こそ、私の使命を果たすべきではないか。
ならばということで、私は考えました。
もっと資料を分かりやすくする必要があるのではないか。
誰の目にも分かる形で、もう一度、資料を見直してみよう。顧客から提示された資料を噛み砕いたつもりだったが、私の作業に不備があるのかもしれない。
分からないのなら、そのパターンをマトリクスにしてあげれば、理解して頂けるかもしれません。それでも駄目なら、フローチャートならばどうか。
私の説明が悪いという事であれば、録音して自分で聞いてみてはどうか。
試行錯誤を重ねました。
100%とは行きませんでしたが、私が予想した結果と、彼が仕事をした結果が限りなくイコールになるようにと。その努力はやがて、功を奏したのであります。
これは彼と私の間で、そう、初めてコミュニケーションが成立した瞬間ではないか。
どこまでが常識かを特定するのは、難しいのではないか。
このようにですね、人が育ってきた環境や状況によって、それぞれの能力やコミュニケーションスキルは千差万別だと思うのです。それを、「あいつはおかしい」と否定して終わってしまうのでは、グループワークとしては体裁を成していないかもしれません。いえ、やはりそれを加味した上でも、あまりにも、という可能性も、やはりあるのかもしれませんが……
これは、難しい問題ではないか。
唯一言える事はですね、今、仕事がうまく行かないと思っている相手の方にも、やはり相手の方なりの『常識』というものが、あるのではないか。という事だと思うのです。
日々を生きて来て、やはりこれだけは譲れないという思いや、こうしたら上手く行くかもしれない、という考えがあるのではないか。
たとえば、それを理解せず、また理解しようともせず、ただ個々人が側面を見ただけで、「あいつはおかしい」と済ませてしまうのは。これは私の個人的な想いとしては、そうはしたくないと。
やはり、分かって頂きたい。理解し、共有したい、という想いがあるものでございます。
今、互いの常識をすり合わせる事ができず、苦労していらっしゃる方には、これは頭が下がる想いであると同時に。
私は、このような事を伝えたいと思うものです。
あなたは間違っていない。しかし、それは同時に相手も間違っていない可能性がある、ということです。
何故なら、人の能力やコミュニケーションスキル、感じ方にはそれぞれ差があり。生きて来た環境が違うものですから、当然それらは、人によって違います。
もしかすると、意外な所で能力を発揮するかもしれない。なので、『自分から見たあなた』というひとつの側面で能力の優劣を決定する訳には、行かないのではないか。
誰にでも、それぞれの『常識』があります。
その『常識』を共有していく事こそが、円滑にグループワークを進める上で必要な事なのではないでしょうか。
などと、これは長い時間を掛けてですね、ようやく自分の身の周りだけでも、円滑なグループワークが出来るようになった私が、人知れず世界の片隅で呼びかける言葉です。
人は大切にしていきたいものですね。
お後がよろしいようで。
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