浮遊する無名作家の浅慮

『ナナマルサンバツ』アニメ化決定。ドラマはテンプレだけじゃない。【漫画レビュー】

ナナマル サンバツ(1)<ナナマル サンバツ> (角川コミックス・エース)
KADOKAWA / 角川書店 (2012-09-01)
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実は、結構前から友人に誘われて手に取らせて頂いておりました、『ナナマルサンバツ』がアニメ化するようなのです。


アニメ『ナナマルサンバツ』公式サイト



こちら、インターネットで検索をしてみるとですね、実は随分前からアニメ化の話は進んでいたらしいということで。なにぶん、好きでコミックスを買っていたというだけの身ですので、詳しい話は追い掛けていないという事はあるのですが。

実は人気が高いですよね、この作品は。私も初めてこの漫画を読ませて頂いた時に、クイズという題材で描かれたドラマに初めて魅入られました。
いえ、クイズという題材で描かれたドラマというものに、出会ったことがなかったということで。

クイズと言えば「ニューヨークへ行きたいかああぁぁぁぁ――――!!」しか知らない私、まさか某ネズミーマウスに眉毛があるかどうかといった問題に対し、真剣に取り組むような漫画というものがあるとは露知らず。
「違うよ、まつ毛があるのは女の子の方だよ」と、何やらとんちんかんな回答をしてしまいそうではありますが。

しかしながら、この作品には「クイズ? ……ああ、老人には足が3本あるとかいうアレ?」等というレベルでは語り切れない程の『熱さ』というものがあるのです。



 『競技クイズ』というものがあるんです。

これは、この漫画を読むまで全くと言っていいほど知らなかったものなのですが。

そもそも、ナナマルサンバツというのは『7問正解で勝ち抜け。3問お手つきで脱落』という競技クイズにおけるルールのことです。
早押しクイズは押しの早さが重要ですが、競技クイズは問題を最後まで聞かずに押すことが通常になってくるので、これはお手付きのカウントも取らなければならない。

なので、ナナマルサンバツなのですね。

これを知らなかった私は初めてこの作品の背表紙を見た時、それは私のお恥ずかしい無知ゆえに、世界の中途半端ガリ勉を集めた結果、国語・数学・理科・地理歴史・英語などといった全ての試験を70点で通過することを目的とした物語かと思ってしまい。
むしろそれは、恋愛ではないかと。スクールラブではないかと。

少年漫画のような熱い展開が好きな友人にしては珍しいものを薦めてくるなと思ってしまったのですが、実はそうではないという事だったという。

そして、この作品はとにかく、それぞれの物語における盛り上がりが凄いんですよ。
スポーツ漫画のような爽快感と、ゲーム漫画にあるような、互いに競い合い、両者が白熱する雰囲気。その両方を兼ね備えた、非常にスタイリッシュで美しいストーリーライン。

対戦でありながら、しかし多人数で参加する競技であるということで。むしろこれは、マリオカートのそれに近いのではないか。
そこでドリフトして、ミニターボ。キノコでショートカットして、誰よりも最速を競う。そのような熱さであり、それはバトル中心のジャンプ系漫画とは、また違った意味での興味深さがあるのではないかと。

むしろ、この作品こそがスターを獲得するべきではないかと。

思わず、そんな事を考えてしまう次第でございます。



 王道であるような、しかし『テンプレ』と言われるものとはまた、違うような。

これらの要素が『競技クイズ』という題材の秘めた力な訳ですが、勿論クイズ自体が素晴らしいだけではなく、そのドラマを描く杉基イクラ先生の物語構成力と言いますか、そのような技術には、たまらず尊敬の念を抱いてしまう、といったところで。

終始物語はスピード感のある展開に包まれていて、飽きてしまうという事がほとんどない。主人公の越山氏は控えめで心優しい性格でありながら、競技クイズにおける情熱というものを併せ持っており。
その内なる熱さが、ライバルとなる御来屋氏の純粋なクイズへの想いを奮い立たせると言いますか。

『タイプの違う二人の登場人物』というのは、競技ものにおける鉄板の設定と言っても良いのかもしれませんが。しかし、そうではないんです。
この作品の素晴らしい所は、登場人物の一部だけにストーリーが固まっておらず、それぞれの登場人物が思い思いに物語へと参加していて、その関係が絶えず変化を続けているんです。

実際に物語を書いてみると、これが中々難しい。登場人物を活かし切るというのは、そう簡単な話ではない、というところで。

このような特殊なルールにおいて戦う登場人物達。そして、少し変わった主人公と我が道を貫くライバル。この関係を鑑みると、一番最初に思い浮かぶのは『ヒカルの碁』かもしれませんね。
そう考えると、ヒカルの碁が好きな方は一度、手に取ってみても良いのではないかと。

むしろ手に取る事こそが、神の一手ではないかと。
ここは宇宙ではないのかと。

そんな事を考えてしまいます。



しかし、この作品は男の子も女の子もクイズが好きで、クイズが好き過ぎて、学生生活の方はどうなんだろう、と気になってしまわない事も無いのですが。
青春とは恋愛なイメージがありますが、このように部活などで友情を築き上げ、築き上げ過ぎてピサの斜塔のようになってしまうというのもまた、ひとつの醍醐味ではないかという。

傾いて不格好かもしれませんが、それこそが青春ではないかという。
むしろピサの斜塔こそが青春ではないか。

そんな、競技クイズに一生懸命になっている登場人物達の熱いドラマを、是非お手に取って頂きたいなと思うばかりであります。

お後がよろしいようで。




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