「小説を書き始めてみたいけれど、一人称と三人称、どちらで書けば良いんだろう……?」
今回は、そのような疑問に答えて行きたいと思います。
小説を書き始めたばかりの頃って、どのように書いて良いか分からないものですよね。
そこで気になるのは、やはり『一人称で書いた方が良いのか? ……それとも、三人称で書いた方が良いのか?』という問題だと思います。
迷いましたよ、私もこの問題は。何しろ、一体どちらを使ったらどういった効果が表れて来るのかが、ちっとも分からなかったものですから。
結論から先に申し上げますと、大前提として、どちらを使っても大丈夫!
……しかし、それでは困ってしまいますよね。
そこで、まずは一人称と三人称、ふたつのメリット・デメリットについて、簡単に書いて行ければと。そのように、考えております。
やはり小説は文章ですから、書こうと思えばどのようにも書けるものですが……この効果の違いを覚えておくと、グッと書きやすくなるのではと思いますよ。
それでは、いってみましょう!
一人称の『近さ』のメリットとデメリット。
一人称のメリットについて。
まずは、一人称で物語を書く場合について。一人称は、「ぼく」「わたし」で始まる小説ですから、当然主人公の見た視点を基に、文章が構築されていきます。
これは、主人公の内面にカメラが常時ある状態であると考えると、分かり易いかと思います。
カメラが主人公の内面に当たっているということは、つまり主人公の価値観を最も共有し易い、ということです。
これは、三人称にはないメリットであると言えましょう。
一人称で書かれると、読み手は主人公の立場で物事を考えます。特に主人公の気持ちの流れをメインテーマとして据える場合、よく使われるのではないかと思います。
一本の物語の中で、とくに強く主人公にスポットを当てたい場合は、一人称が最適であると言えましょう。
あれこれ考えている内面が等身大で見えるので、主人公はより立体的になります。
見ているものを共有し易いということは、つまり主人公が騙されるような展開の場合は一緒に読者も騙されるということで、叙述トリックが組みやすいという事もあります。
大きく盛り上がるシーンなど、主人公のテンションが上がる時には、それが物語の面白さに直結するため、よく言われる「アツい」展開を作り易いという所が最大のメリットであると、私は感じております。
主人公が奮い立つ一瞬に読み手がストレスなく付いて行く事の出来る一人称の魅力は、何と言ってもここに尽きるのではと思うくらいです。
一人称のデメリットについて。
反面、主人公以外のキャラクターがあくまで『他人』としてしか見られないのも、一人称のポイントです。主人公にカメラが向いているため、主人公の外側で行われている事に一切干渉できませんし、他の登場人物が考えている事は、究極の所では分かりません。
そして最も肝心なのは、一人称で物語を書く場合は、三人称視点の時よりも主人公との距離が近い為、主人公のメンタルに嘘がある場合、読み手にそれを最も見抜かれやすいということ。
急に熱が冷めてしまい、面白くないと感じさせてしまう原因になりますので、注意が必要です。
「あれ、これは変!」と言われるだけなら直せば良いのですが、問題になるのは、読み手にも書き手にも理解の及ばない所で主人公の気持ちに矛盾がある時など、言葉で言い表せない問題を抱えている時。
例えば、事前にシーンが足りていない場合……極端なケースでは、いきなり『二年後』なんて、物語が飛んでしまう作品もありますよね。あれは、一人称ではとてもやり辛いです。
一人称では主人公の気持ちに付いて行けている事が重要なので、主人公の気持ちが無になってしまうシーンがよく問題になるんです。
言葉に出来ないが、納得も出来ない部分。それが作品の魅力ダウンにすぐさま移行し、「なんか面白くないな……」と思われてしまいます。
時々、一人称は書きやすいから初心者にオススメ、なんて記事を見かける事がありますが、私はむしろ真逆だと思っており……小説的な書き方に慣れていないうちは、三人称から始めた方がスキルが追い付く事が多いのではないかと。
と思うのは、一人称ではカメラの位置が迷子になりやすいので、三人称で『カメラの位置』という考え方をまず押さえてから、一人称に進んだ方が良いのではないかと感じるからです。
三人称の『遠視』のメリットとデメリット。
三人称のメリットについて。
次に、三人称で物語を書く場合ですが……これは、大体の方が予想されると思いますが、基本的にはカメラの配置を登場人物の内面ではなく、外側に置くという手法になります。三人称でありつつ、一人称視点も併せ持った手法などもありますが、つまりは語りたいシーンでカメラを置く位置を何処にするのかだと考えると、スムーズに理解が出来るのではないかと思います。
三人称で物語を作ることによる最大のメリットは、「複数の登場人物の描写」が出来る、ということです。
例えば、物語を作る上で据えたいメインテーマが主人公だけのモノではなく、登場人物全員に関わる内容だった場合。
または、サスペンスやアクションなど、登場人物一人の範囲を超えた、物語全体の現象を中心にしたい場合は、三人称が適切です。
一人称で語ることの出来る内容には限りがあり、また良くも悪くも主人公に寄るので、伝えたい事が歪曲して伝わってしまう事にも成り兼ねません。
そこで、三人称の登場となるわけです。
登場人物の内面に寄り過ぎる事無く、実際に起きた台詞と行動で示される文章運びは、それぞれの登場人物を客観視する事に繋がり、全体で起きているドラマの内容をより多面的に把握する事が出来るようになります。
つまり、登場人物に寄らない代わり、起きている事がはっきりとしていて、より分かりやすい。
三人称で書く事には、そのようなメリットがあると言えましょう。
三人称のデメリット。
代わりに、「○○は××と思った」「俺は××と思った」のような表現が使えなくなるので、登場人物の気持ちを表面に出すためには、少しばかり工夫が要ります。直接的に感情が言葉で書けないということは、「行動やシーンの内容で、登場人物の間に起こる感情を表面的にしてやらなければならない」という技術が必要になってきます。
そういう意味では、やる事は少し増えて来ますね。
また、登場人物全員の気持ちに矛盾がないように作らなければならず、主人公ではなくとも、シーンに登場するキャラクターの誰かに共感できないと、『つまらない』となってしまいがちです。
大体そういう場合って、「なんか面白くない」「共感できない」といった曖昧な感想になる事が多く、読者の反応からは修正ポイントを見付けられない事が多々あります。
俯瞰しているという事は、登場人物に感情移入させ難いんです。
これは大きなネックであり、全てのシーンに関わって来る問題であると言えましょう。
……しかしまあ、小説以外の表現体は、殆どが三人称なので……どちらかと言えば、一人称の方が特殊なんですよね。だから、あまり気にする事は無いと思います。
三人称で面白く書ける方は、きっと一人称でも面白く書けると思いますし、逆もまた然りです。
私としては、一つずつ階段を登って行けば、いずれどちらも使いこなせるようになると思っておりますよ。
私としては、一つずつ階段を登って行けば、いずれどちらも使いこなせるようになると思っておりますよ。
それぞれの使い所と、「混ぜる」描写について。
混在の注意点。
さて、上記のような特性を理解した上ならば、ある程度自由に選択する事も出来るようになるかと思います。それでも迷ってしまう場合、注意しておきたいのが、一人称と三人称を混ぜて書くケースです。
物語が幾つかの段落に分かれている場合や、或いはどうしてもシーン上そうするしか無い場合。主人公が変わる場合などが、これに該当するでしょうか。
『一人称と三人称を混ぜるな!』とは勿論言えませんし、それで面白い作品も沢山あります。
しかし、混ぜる事によって少し、難易度も変わって来ますね。
まず知っておきたいのは、多くの場合、カメラの視点が変わる事は、基本的に読み手側の理解を妨げる傾向にある、ということです。
それでも、登場人物の全てにそれぞれスポットを当てたい。この問題を解決するためには、どこでカメラが変わったのか、明確にしてあげる必要があると考えます。
それはシーン構成であったり、文章上の工夫であったり。
また、読者が置いてけぼりになるようなカメラの移動は厳禁です。
例えば、一番よくあるカメラの移動として、『過去編』とかってあるじゃないですか。「こんな過去編いらない!」と思った事、ありませんか?
あれは、まだ現在の主人公を追い掛けていたいのに、唐突に過去の主人公に切り替わってしまうので起こる現象なのですよね。
付いて行ける過去編は……たとえば、「ここで主人公はこう感じた!」→「何故だ!?」→「実は、過去にこんなことが……」と、カメラの移動が分かり易いような構成を取っています。
ここが作者の技量になるというわけです。
このように、ちょうどキリ良く主人公を切り替えたくなるようなタイミングで、カメラの位置を変えるという事を視野に入れましょう。
簡単な所では、話が一段落した後などがポイントになりますね。
まとめ。
さて、これらを簡単に箇条書きでまとめてみました。- 主人公にスポットを当てたい時、主人公の内面を描きたい時には、一人称を使う。
- 複数の登場人物や、物語そのものにスポットを当てたい時は、三人称を使う。
- 一人称と三人称を混ぜる時は、カメラの移動で読者が混乱してしまわないように気を付ける。
小説は人を楽しませるものですから、やはり分かり易く楽しんで頂ける小説を書いて行きたいものですね。
お後がよろしいようで。
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