浮遊する無名作家の浅慮

『Helck』というマンガを、知っているだろうか。【漫画レビュー】

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小学館 (2014-08-18)
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さて、知る人ぞ知る……と言うべきでしょうか、周囲に聞いてみたらちっとも知らない人ばかりだったもので、このマンガについてレビューさせて頂きたく。

『Helck』という、七尾ナナキ先生の作品でございます。

あまりメジャーではないのでしょうか。いやしかしですね。面白いんですよ、この作品は。

『マンガワン』で全編読めます。まずはそちらでお読み頂いて。私としては是非、コミックスの方にも手を出して頂きたいなと。

表紙を一見する限りでは、何の捻りもないファンタジーのようにも見えてしまいかねないのですが、中身はもう捻りに捻りすぎて……気分はひねりあげ。

よくできてるんだよなー、なんて、思わずぼやいてしまいます。

完結する瞬間を『マンガワン』で立ち会ったのですが、きちんと最後までしっかり作られた物語で、私としては感無量です。おすすめですよ。






主人公……?

さて、せっかくAmazonのリンクを貼ったので、この一巻の表紙を見て頂きたいのですが。

中央には、主人公と思わしき……可愛らしい、魔法使いの姿。


まず、彼女は主人公ではなく……


いえ。こう言うと語弊を招いてしまうおそれがありますので、訂正します。主人公かと言われれば、もちろん主人公の1人ではあるのですけれども。彼女はヒロインで、ヴァミリオという名前の少女です。

この作品のタイトルにもなっている、主人公の中の主人公。『ヘルク』と呼ばれる主人公は、後ろのゴツい顔の方で。

ええ、こちらが主人公なんです。何やら暑苦しそうな方が。

もうこの時点で、何やら不穏な空気が漂ってくる事が……お分かり頂けるのではないでしょうか。

見るからに筋肉が付きまくっているマッチョの主人公が、人間であるにも関わらず、その恐怖さえ覚える爽やかな笑顔と拳で、人類よりも遥かにハイスペックな魔族の人々をバッタバッタと殴り倒す。

いやー。なんと申し上げましょうか、この時点でインパクトが凄いです。思わず呆気に取られてしまいました。

冒頭では、山も谷もオチも全部微妙……? いや、これでいいのか……? 分からない……と、個人的には疑惑に満ちた状態でした。

この感覚はそう……あれです。『マテリアル・パズル』を読んだ時と同じ気持ち。不可解なギャグと激しいテンポで、呆然としているうちに冒頭のストーリーがロケットの如く通過していくかのような、不思議な走り出し。

時々『くすっ』と笑っているうちに、やがてそれは『ブフッ』になり、やがて腹を抱えて笑いを堪える……という熱の上がり方は、まさにやらかしていくスタイル。

マッチョ、ゴツい顔、そして勇者。『人間滅ぼそう』と笑顔で言う彼は何でもできて、なんだか読んでいる方も好感度が上がっていきます。こんな主人公、見たことない。

そんな、ギャグとユーモアに満ち溢れた……シリアスな話でした。

……シリアスな話でしたよ。


丁寧に掘り下げられていくストーリー。

この作品の最も素晴らしい所は、やはり出オチではない所にあるのかなと。私は、そのように感じております。

これだけキテレツな登場人物を揃えた上で、話は決して適当ではなく、軽くもなければ冗談でもないところが……そのギャップに、ぐいっと心を持っていかれるのですよね。

想像もできなかった登場人物それぞれの暗く重たい過去に触れる頃、作風は一変。魅力的なキャラクターである所は維持しながらも、明るく豊かなコメディから世界の運命をかけたシリアスな話に変化していきます。

この移行の仕方が実に見事で、感嘆にため息が漏れるほど。

序盤の掴みがばっちりだったので、後半の細部の深さにどんどんハマっていき、最後は主人公達を応援してしまう、という……始めからこれを想定して作っていたのでしょうか。作っていたのでしょうね……。

冒頭の不可解なギャグでさえ、伏線として回収されてしまうのですよ。すごい。これはもう、読むしかない。

先日、『出オチと思わせて実はきちんと作られた話は、やはり面白い』という類の話を友人と交わしてきたのですが、まさにそのコンセプトに直球ストレートを投げるかのようなシナリオ運びは、その言葉が間違いではないことを教えてくれます。

いやー。ちゃんと完結してよかった。

七尾ナナキ先生の他作品にも、興味が尽きないところです。



やはり、きちんと作られた作品が面白いというのは、いつの時代になっても変わることはありませんね。

勿論好き嫌いはあるかと思いますが、私はこの作品、強くおすすめさせて頂きたいなと。そんな事を考えておりますよ。

ファンタジーを題材にした作品は数あれど、ここまで劇的に作品の印象が変わっていく作品というものは、近日見たことがなく。それだけに、価値が高いなあと思うばかりでございます。

ラストの方なんて、思わず涙がこぼれる内容ですからね……。

私も、こんな話が書けるようになりたいものです。

お後がよろしいようで。


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