前回までの記事で、およそ物語を作るために必要な『きっかけ』のようなものが掴めて来たのではないかと、切に願っております(拙文のこと、申し訳ございません)。
しかしながら、今回は物語を作るためのスタートラインについて、何の説明も無いままに進んでしまいました。
そう、物語を思い付く為には、一番最初にキモとなるシーンを思い付かなければならないのです。
シーンを思い付く事が出来なければ、これをきっかけにして前方・後方に構造を広げていく手段がありません。
今回からは、そんな話をしていきたいと思います。
シーンを作る!
さて――……、唐突に『シーンを作る!』と決めたとしても、何から手を付けて良いのか分からないというのが、本音なところだと思います。始めのきっかけというものは、神に祈るしかないのか? あたしゃそれが出来なくて困っているんだよ、と。
物語に触れている人が息を呑んでしまうような、圧倒されるシーンというのはどこから来るのでしょうか。
勿論、文章的な説明はあります。今までと同じように、ある『状況』を想定し、登場人物がその状況に対して行動を行うこと。登場人物の行動によって場の状況が変化すること。
これを根拠に考えて行けば良いのです。
しかし物語の中で一番見せたい部分となると、そう簡単にはいきませんね。
(そもそもこれが存在していない状態で、物語を書きたい! となるかどうかはさて置いて)何故かと言えば、ただ状況が変化するだけで醍醐味もへったくれもないようなシーンを主軸に置くと、当初予定していた目標が達成出来ない事が多いからです。
圧倒されたり、感動されたりという事を目標としている訳ですからね。
では、感動というのはどこから来るのでしょうか。
色々な種類はあると思いますが、ドラマとしてひとつ言える事は、『登場人物の意志や決断、想いの強さに惹かれて』感動するという事でしょう。
という事は、多くの場合、登場人物が激情に駆られるシーンである場合が多いですね。
伝えたい何かが弱ければ、その物語全体におけるメッセージ性もまた弱くなってしまい、平坦な物語になります。
核となるテーマとすべき『メッセージ』とは
ここでひとつ。伝えるべきメッセージは、その登場人物の経験・感情に由来する所が多いです。言い換えれば、登場人物ないし主人公が狙った通りの気持ちになると、又は何かを経験することで、見る・読んでいる人もまた、何かを感じずにはいられないという事です。
しばしば『テーマ』と混同され易く、また等しくなる場合も多いのですが……物語において最も重要なシーンが、必ずしもテーマと一致するとは限らないので、このブログでは別物と扱っていきたいと思います。
…………少し、難しい話になってしまいました。
つまりは、登場人物が挑戦すべき行動が(当人にとって)大きければ大きい程、そこに訪れる感情の波は大きくなり、核となるシーン足りえる状況を想定する事が可能になる、という事です。
例に取ってみましょう。
『物語構造の分解』、『物語構造の構築』編では、A君がBさんへと告白するシーンをメインに持って来ました。その理由は、分かり易く登場人物の感情が揺さぶられるシーンだったからです。
では、感情が揺さぶられるシーンとは、どのようなシーンの事でしょうか?
これもまた色々な種類がありますが、今回は登場人物の立場を『告白する側』と『告白される側』とで二極化した事によって『大きな行動』が発生し、与えられる感情の波が大きくなりました。
キャラクターではなく、そのシーンにおける双方の立場を二極化する、という視点で考えてみましょう。
きっと、「あ、これは」と思うシーンを発見する事が出来るはずです。
例として、筆者の体験談をお話したいと思います。
筆者が初めて物語を完成させる事が出来た時、初めてひとつのシーンを思い付いた時は、『戦争に行く事を正しいと思う人』と『戦争に行かない事を正しいと思う人』との対話をきっかけにして、物語を作っていった事をよく覚えています。
そこからシーンを創り、初めてその上に登場人物の人格を見出す事が出来るようになりました。
当時は気付きませんでしたが、この『立場の二極化』によって双方の考えに差異が生じ、まだ存在しないシーンにおける『大きな行動』の意味を見出す事が出来るようになっていたのです。
キャラクターが無くても、そのシーンにおけるキャラクターの立場は存在します。それこそ、シーンを思い付くに至る根拠となるのです。
物語を思い付く上で、何かのきっかけとなれば幸いです。
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