さて、体よくシーンを思い付く事ができ、構造も考え付く事ができたと!
そのような状況下で、きっと完結する物語はもう書けるようになっているでしょう。なっている事と思います。なるんだ!
さて、『物語構造の構築』編の最後で、あれはスタートラインだという話をしました。
書くもの全て思い通り! ……になる為には、もう少し訓練を積まなければなりません。
ま、ぶっちゃけそんな日は筆者の身にも訪れていませんけどね。
試しに二、三作ほど、短編を書いてみると分かると思います。
一応、予定通りに物語を進める事は出来るようになったものの……なんだか、予定していた通りの面白さが実現できない……
そんな感じではないでしょうか。
そこまで深く考えずに、書ければええねん! ……な場合は、これまでの技術でも大丈夫かと思いますが。
それだと、このブログが終わってしまうので。(重要)
もう少し、詳しく考えて行きたいと思います。
さらなるステップ
さて、思い通りに行かないのは何故だろう。考えていきましょう。前回までに記事として起こした内容の中で、最も重要な部分は状況と目的と行動と結果、だとお話してきました。
ところが、これだけの情報で話を書き始めようとすると、この『行動』するという内容に疑問を持つことが、微かに分かって来るのではないかと思います。
A:目的を持って行動している筈なんだけど、なんか説得力がないなあ……
B:キャラクターを上から眺める物語ではなくて、共感出来るような物語にしたいんだけど
この二つは、実は同じ事を言っています。
それでは、『説得力』について。以前まで進めてきた構造のうち、ワンシーンを抜き出して考えてみたいと思います。
■テーマは『嘘』
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○主人公とヒロインが出会う
・A君は、ノリの軽い青年。携帯電話を片手に、幾つもの女子とメールをしている。
・新しい仕事ということで、A君とBさんが同じ部署に。
・A君がBさんと初めての出会い。奇遇にも、隣の席に。新しい女子だったので、A君はBさんを観察する。
・……地味で、どこか固い雰囲気のある女性だ。
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まずは、これです。シーンの集合体として見ていた時は何の問題も見られなかったこのシーンですが、ここだけ抜き出して考えてみると、不思議な所が色々と見えて来ます。
もっと簡素にまとめると、以下のようになりますよね。
・A君は、新しい部署へと移動している状況。
・そこで新しい部署の中にBさんがいる。たまたま、隣の席になった。
・A君はBさんを観察しようと思った。
では、質問です。
どうして、A君はBさんを観察しようと思ったのでしょうか?
なんとなくフイッと観察してしまう事も、やはり出来てしまうんですね。
そして、そのさり気ない一瞬こそが、多くの登場人物が説得力を失う瞬間でもあるのです。
若しもリアルな反応を求めるシーンだったのだとすれば、これだけでは情報が足りないという裏付けでもあるのですね。
なんで『何気ない一コマ』では駄目?
一見すると、具体的な行動としては出て来ていないようにも思えますが、A君は間違いなく、Bさんを観察しようと『思った』のです。ということは、当然そこには目的がある。A君が興味を引かれるような何かが、そこにはあったと考えるのが自然です。
強い要素だけとは限りませんよ。たまたま、魚の髪飾りを付けていて目に留まったとか、まあそのような内容かもしれません。
その何かを、決定せずに物語を書く。こうすることによって、登場人物の行動に希薄さが現れます。
俗に言う、「…………なんかフワッとしてんのよ!!」状態になります(何だそれは)。
逆に、より詰めて考えていく事で、登場人物はリアルになっていきます。
キャラクターを上から眺めるような感覚になってしまうのは、その行動に共感出来ないということです。共感する事を目的としていないからであり、従って上記ABの質問は、同じ事を言っている、という事になります。
・行動についての意味が書かれていない登場人物ほど、或いは判子絵のような、固定概念化されたキャラクターになっていきます。
・行動についての意味が書かれている登場人物ほど、その行動に説得力のある、リアリティの詰まったキャラクターになっていきます。
これを上手く使い分けられるように、どの程度まで詰めると、どうなっていくのか。それを知っておく事が大切です。
そうする事でもう一歩、理想の物語に近付く事が出来るかもしれません。
次回はもう少し、この視点について詳しくお話していきますね。
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有効なシーンを思い付け!
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演技論で、人物に説得力を② リアルを追求するということ
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