さて、『物語構造の構築』も大詰めです。
今回用意したベタなワンシーンから、一連のシーン構成を抜き出してみました。
現段階における、最終的な構成はこちらになります。
物語構造のカタチ
■テーマは『嘘』
-------------------------------------------------
○主人公とヒロインが出会う
・A君は、ノリの軽い青年。携帯電話を片手に、幾つもの女子とメールをしている。
・新しい仕事ということで、A君とBさんが同じ部署に。
・A君がBさんと初めての出会い。奇遇にも、隣の席に。新しい女子だったので、A君はBさんを観察する。
・……地味で、どこか固い雰囲気のある女性だ。
○主人公がヒロインを好きになる
・部署の人間の提案で、飲みニケーションと称した集まりが勃発。
・その場で、初めてA君はBさんと話す事に。いつもの通り気軽に話し掛けるが、BさんはA君を避ける。
・何だ……嫌われているのか? A君は思うが、Bさんは誰にでもそういった態度を示すという事に気付く。
・何か、事情があるに違いない。身持ちの固い女は嫌いじゃない
・できれば、仲良くなりたい。そのようにA君は思う。
○会えないヒロイン
・A君はBさんのメールアドレスを聞き出し、二人で会いたいと話す。……が、Bさんはことごとく無視。
・どうして、あんなに人を避けるんだろうか。A君はそう思い、Bさんを無理矢理呼び出す。
・理由を聞くと、Bさんは「人が苦手だから」と話す。
・A君は良い人を装って、Bさんをどうにか連れ出そうとする。
・「……わかった。いいよ」曖昧な、Bさんの返事。
○本音で話し合うようになる。
・二人で会うが、Bさんはあまり喋らない。一応デートなので、A君は予定通りに進めていく。
・あまり、楽しそうじゃないような。……でも、なんだか楽しそうなようにも見える。無理をしている。複雑な心境。
・予定通りに告白をすることに。一応これで、手順は追ったが――……
・Bさんは、A君の事を見抜いていた。「うそつき」Bさんの言葉に、A君は驚く。
・仲良くなりたいだけだ。A君は弁解するが、なら自然にしていればいい、とBさんは話す。
・まるで、本当の自分を見せたくないみたい。Bさんの言葉に、A君は考えを改める。
○今度は近寄れない
・A君はBさんと、真面目に話してみようと試みる。だが、Bさんは会おうとしない。
・Bさんの周りには、極端に人が居ない事に気付く。理由を聞きたいが、本人は不在。
・無理に話し掛けようとして、怒りに触れてしまう。もう、話し掛けて来ないで欲しい。
・どうして、そんなに人を避けるのか。その理由が知りたい。
○主人公とヒロインの仲が友達以上恋人未満までに成長する
・夜、A君はBさんを発見する。寝間着のまま、どこかに歩いて行こうとするBさん。
・追い掛けると、ビルの屋上へ。こんな時間に、ビル……? そもそも開放されているとは。驚きながらも、A君は追い掛ける。
・Bさんは、屋上でA君の尾行を発見する。どうして、こんな所に。
・なんで、そんなに人を避けるんだ。ついに口に出すと、Bさんは笑う。
・仲良くなったら、また嘘をつかれるのが分かってるから
・悪かったと、思う。もう、嘘は付かない。だから、本当の事を教えて欲しい。
・BさんはA君と話題を共有し、A君に対して好意を抱く。
○最近様子がおかしい……
・会社に、Bさんの姿が見えない。気になって携帯電話に連絡してみるも、留守電。
・何かあったのでは? A君は思うが、家の場所は分からない。友人も知らないと言った。
・A君は、Bさんの言った言葉の意味を考える。また嘘をつかれるって、どういうことだ……?
・こうなったら、部署の人間でBさんに詳しそうな人間に聞いてみるしかない。
○主人公がヒロインの病気について理解する
・A君はBさんが病院で入院しているという事を、同僚から聞く事になる。
・何も知らされていなかったA君は、Bさんの居る病院へと走ることに。
・何も伝えていなかったBさんは、A君が唐突に病院に現れた事で、驚きを隠せなかった。
・A君は、どうしてBさんが病気の事を話してくれなかったのか、その事について聞く。
・Bさんは、A君にだけは知られたくなかった。嘘をついていたと、話す。
・だって、本当の事を言えば、また皆が仮面を被って、嘘の顔で私に優しくするでしょう
○告白のシーン
・A君が、Bさんに告白する。
・Bさんが、A君の態度の変化に気付く。その気持ちが本当だという事が分かってしまったので、A君に言う。「どうせまた、嘘なんでしょ?」
・違う。今度は本当だ。A君はそう言うが、Bさんは信じない。
・でも、BさんはA君の告白に答えられない。
・その反応を分かっているA君も、答えられる事はないということを理解していた。
-------------------------------------------------
改めて見てみると、あんまりベタでは無くなっていますね。
そもそもベタな物語というのは、万人が同じ話を考えた時に似たような前後関係を思い浮かべるからそうなるものです。
ということは、ある一つのシーンだけでありきたりかどうかを判断する事はできないのですね。
ラストのシーンだけ書かれていませんが、まあこれは後でどうとでもなるので……今回は、これで『基本構造の完成』とさせてください。
細部をちょちょいと弄れば、このままでも今度は完結する物語が書けるようになっていると思います。
物語構造のこれから。
しかし、これは終わりではありません。……むしろ、ここからが本番です。最初から最後まで無理なく進められる物語は、この手法によって作る事が可能です。……しかし、共感出来たり、面白かったり、驚きがあったりという内容を求めるなら、こんな所で止まっている訳にはいきません!
ここから、更なる分析が必要になってきます。ちょっと次回から話が逸れますが、そのうち重点的にその視点についてお話出来ればと思います。
今回ご紹介させて頂いた内容は、小説と言うよりは、ドラマや舞台作品的な物語の作り方になっています。
小説では、二名の対話によって創られるシーンだけではなく、主人公が一人で何らかのきっかけを受けて心境が変化するシーンや、思考して解決策を導き出すようなシーンが含まれる、という事もあります。
……という視点から考えると、会話ばかりのシーン構成というのは、小説にはあまり向いていなかったり、ということも。
どんな場合でも、基本を抑えていれば、その応用で話は作れるようになって行きますけどね!
さて、それではおさらいをしてみましょう。
- 物語(或いはドラマ)とは、幾つかの『シーン』の集合体である。
- シーンとは、ある状況下において、登場人物の目的と行動を追い、それに伴う結果を得るまでの過程を示したものである。
- テーマとは、ある物語(シーンの集合体)にひとつの方向性を見出す為に設定されるものである。
- 登場人物とは、ある物語において、確実に必要な人物関係だけを抜き出したものである。
- 世界観とは、ある物語において、登場人物から見えている世界を反映させたものである。
これらを集合させる事で創られるのが、皆さんご存知、『ストーリー』なのでした。
とにもかくにも物語というのは、こうした感情の変化の連続によって創られます。
世界設定やキャラクターを一生懸命作っても、こうしたストーリーを思い付く事が出来る訳では無かったんですね。
思うように話が作れなくて困っているというそこのあなた、モノは試しですよ!
一度、この方法で考えてみては如何でしょうか。
でも、そんなに簡単に最初のシーンを思い付く事は出来ないんだよ!
その疑問に答えるべく……、次からは少し、変わったお話をしていきたいなと思います。
題して、『有効なシーンを思い付け!』です。
← 一つ前の記事
物語構造の構築⑤ 世界観を設定するために
→ 次の記事
有効なシーンを思い付け!
スポンサーリンク
スポンサーリンク
0 件のコメント :
コメントを投稿