浮遊する無名作家の浅慮

物語構造の構築③ 登場人物を考える意味と物語に与える影響


登場人物

ああ、内容が深くなっていくたびに、説明も難しくなってしまって、それをどうやって簡潔に説明したものか…………
何かを説明する時の永遠の課題ですね。

さて、物語構造の構築、次の課題はこちらです。



 登場人物をもっと掘り下げよう!

なぜ登場人物を作る段階をここまで引き下げたのかと言えば、『~はこういうキャラだから』という価値観が、物語構造を邪魔しないようにする為だったりします。
物語構造に対しての理解が浅いうちから登場人物を先に作ってしまうと、物語構造との対立が起こってしまう事がヒジョーに多いです。


例えば、主人公は少年漫画に出て来るような、さっぱりとして嫌味の無いタイプの人間だと決めてしまった後で……思い付いたシーンは尾を引くような、恋愛のワンシーンだったりする事もある訳です。
本当はもっと悩んで欲しいのに、直情型過ぎてシーンにならない! ……なんてこともある訳で。


展開を追っていくと、当然恋に落ちるシーンがある訳で。出会いのシーンもありますよね。
二人の登場人物間で話が食い違ったり、あれ? この話、このキャラクターじゃなくても良いんじゃないの、なんて。

こうなると、話を書けば書くほど、目的とする話からは逸れて行ってしまう。
登場人物とシーンを同時に思い付く事もあるので、その場合は苦にはならないのですが。


自分で作った登場人物が、自分で作ったシーンを壊していく可能性がある、ということです。
反面、ある程度、物語のシーン構成が見えている段階であれば、この上に作るキャラクターというのはシーン構成に支障を来たさない場合が多いです。
何しろ、どんな出来事が起こるのかが既に見えているのですから、対立しようがありません。
だから、物語構造ができてからの登場人物作成なんです。


……でも、慣れれば同時に考えられるようになりますよ。ここは訓練ですね。



 具体的な登場人物の考え方

それでは、実際に登場人物の性格やスタンスについて追求していきましょう。

「登場させたいキャラクターが沢山あるんだ!」
「もう、誰が話のどの辺りで活躍するか決めているんだ!」

分かります。ええ、本当に。……でも、ちょっと待ってくださいね。
一旦、思考をフリーにして考えてみましょう。
シーン構造が決まる前に用意していたキャラクター構成は、一度忘れた方が良いくらいだったりします。
勿論、使わない訳ではありませんよ! 理屈に沿って考えていく必要があるのです。


実は、折角一生懸命に作ったテーマ、凝った登場人物、凝った世界観って、うまくシーン構造と混ざり合わない場合の方が多いんです。


それは何故でしょうか?

……今回は、先に解答を言ってしまいます。


思い浮かべた内容は、作り上げたシーン構造との関係性が存在しない事が多いからです。
しない、と決め付けるものではないので、そこはご注意を! 勿論、稀に上手く行ってしまう場合があります。物語を作る作業って、そういう偶然性が結構あるもので、たまたま良いカンジになって、その理屈が分からずに苦労する事がものすごく多いんです。


では、どのようにして登場人物を作って行けば良いのか。
『物語構造の分解』編を思い出してみてください。漠然と思い描いた二つのシーンは繋がらず、結局一度、捨てる事になってしまいました。
それは何故でしたか? 各シーン間に、物語構造の前後関係が存在しないから、でしたね。


 対立した人間関係を組み込んでみる

というわけで、シーンができてから登場人物の性格を改めて考える訳なんですが。今までに作ったシーンを基にして、登場人物のポジションを定めてみます。
まずは、シーン的に最低限クリアしていなければならない要素を洗い出す事が重要です。

A君はBさんと出会い、積極的にBさんに話し掛ける必要がありますね。
Bさんは今は何も描かれていませんが、分かっているのは病気になるということですね。

ここで、前項で作成した『テーマ』が強く発揮される事になります。

今回のテーマは二人の『嘘』に重点を置くことにするので、主人公のA君は嘘付きなタイプにしてみましょう。
そうすると、対となるBさんは、割と正直者なタイプでしょうか。

A君が真面目なタイプなら、Bさんは少し軽い雰囲気のタイプ。
A君が積極的なタイプなら、Bさんは控えめなタイプにします。

この設定、よく見掛けると思いませんか? どうしてA君とBさんの性格を対極に設定するのでしょう。
それがセオリーだからでしょうか? うまく物語が運ぶから、葛藤が生まれるから、なんて表現されたりしますね。


しかし、そうではありません。


本当の事を言えば、A君とBさんがどちらも真面目でも、別に何ら問題はないんです。作ることは可能なんです。
対極の位置付けにされやすい理由……それは、『作者が感情のすれ違いを認識し易いから』です。

初心者向け、ということですね。
どうして、と思った方は良い所を突いています。物語を作るのに、初心者向けも上級者向けもあるか! 俺は私は、自分の作った『このキャラクター』を使いたいんじゃ!
もちろん、それでも大丈夫です。……但し、作る内容、考える事が増えます。その点については、覚悟しておきましょう。

長くなってしまったので、次項に続きます。
これまでのプロットは以下です。

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○主人公とヒロインが出会う
・学校。クラス替え?
・A君とBさんが出会う。ぎこちない会話?
・関係も曖昧なまま。でも、A君は少しだけ、Bさんの事が気になっていた。

○主人公がヒロインを好きになる
・状況は未定
・Bさんの何かの様子を見て、A君がBさんを好きになる。
・できれば、仲良くなりたい。そのようにA君は思う。

○主人公とヒロインの仲が友達以上恋人未満までに成長する
・状況は未定
・A君はBさんに、何かを話す。
・BさんはA君と話題を共有し、A君に対して好意を抱く。

○最近様子がおかしい……
・A君の通う学校に、Bさんの姿が見えない。気になって携帯電話に連絡してみるも、留守電。
・何かあったのでは? A君は思うが、家の場所は分からない。友人も知らないと言った。
・こうなったら、先生に聞いてみるしかない。

○主人公がヒロインの病気について理解する
・A君はBさんが病院で入院しているという事を、先生に聞く事になる。
・何も知らされていなかったA君は、Bさんの居る病院へと走ることに。
・何も伝えていなかったBさんは、A君が唐突に病院に現れた事で、驚きを隠せなかった。

○告白のシーン
・A君が、Bさんに告白する。
・でも、BさんはA君の告白に答えられない。
・その反応を分かっているA君も、答えられる事はないということを理解していた。
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