前の記事までで追い掛けていた『物語構造の分解』を通して、最も基本的な物語構造について説明して来ました。
と、いうことで! 今回からはタイトルも新たに、新コーナーに移りたいと思います!
ここからは複数の異なるシーンを繋ぎ合わせて、物語全体を通して、基本的な構造を具体的な例を出しながら作って行きたいと思います……!
その前に、前回までの内容について、まとめていきましょう。
構造ってなんだっけ
・物語(或いはドラマ)とは、幾つかの『シーン』の集合体である。・シーンとは、ある状況下において、登場人物の目的と行動を追い、それに伴う結果を得るまでの過程を示したものである。
改めて振り返ってみると、非常に単純ですねえ。
『オッカムの剃刀』は、「より複雑な論理の証明と、より簡素な論理の証明があった場合、後者を選択すべきだ」と解きました。
複雑に見える物語も、いざ分解してみると二つの法則しか存在しません。なるほど、気楽なものですね。
どうでもいいですね。
ただ注意しなければならないのは、これは基本原則に過ぎないという事です。これが分かったからといって、物語が書けるようになったとは言い切れません。
というか、そもそもまだ書いてないですし。
上記二つの視点において、前回まで追い掛けてきた『特に何でもない、ベタ過ぎる恋愛話』のシーン構成をはっきりとさせてみましょうか。
この話、本当に面白くなるんですか? ……いやー、どうだろう。
シーンに必要なものをまとめてみたよ
確実に存在すると分かっているプロット上のシーンに対して、それぞれ状況と目的、行動と結果を視点に置いて、まとめてみました。-------------------------------------------------
○主人公とヒロインが出会う
・学校。クラス替え?
・A君とBさんが出会う。ぎこちない会話?
・関係も曖昧なまま。でも、A君は少しだけ、Bさんの事が気になっていた。
○主人公がヒロインを好きになる
・状況は未定
・Bさんの何かの様子を見て、A君がBさんを好きになる。
・できれば、仲良くなりたい。そのようにA君は思う。
○主人公とヒロインの仲が友達以上恋人未満までに成長する
・状況は未定
・A君はBさんに、何かを話す。
・BさんはA君と話題を共有し、A君に対して好意を抱く。
○最近様子がおかしい……
・A君の通う学校に、Bさんの姿が見えない。気になって携帯電話に連絡してみるも、留守電。
・何かあったのでは? A君は思うが、家の場所は分からない。友人も知らないと言った。
・こうなったら、先生に聞いてみるしかない。
○主人公がヒロインの病気について理解する
・A君はBさんが病院で入院しているという事を、先生に聞く事になる。
・何も知らされていなかったA君は、Bさんの居る病院へと走ることに。
・何も伝えていなかったBさんは、A君が唐突に病院に現れた事で、驚きを隠せなかった。
○告白のシーン
・A君が、Bさんに告白する。
・でも、BさんはA君の告白に答えられない。
・その反応を分かっているA君も、答えられる事はないということを理解していた。
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手前を追い掛けるにつれて未定が多くなっていますが、ひとまずこれで問題ないでしょう。たぶん。
……あ、ここで書いた事が、そのまま採用される訳ではありませんよ。ただ、今はこうだと仮定する事が大事なんですね。
書いてみないと比較もできないですからね。
次の問題点を考えてみよう
さて、ここまで明確にした事によって、新たな疑問点が浮かび上がりました。あるシーンから思い付いた今回の物語には、解決すべき主題の『問題』が提示されていません。
あるシーンから思い付いた今回の物語には、登場人物の詳細もありません。
あるシーンから思い付いた今回の物語には、驚くべき事に世界設定すらありません。
いやいや、ちょっと待ってくださいよ。
物語を作るのに、『テーマ』と『登場人物』と『世界観』が存在しない? そんな訳あるかと。ないだろと。
だってそれは、私達が物語を作る為に、一番最初に考える部分じゃないのかと。
結論から言うと、順番としては後に考えた方が、作品はスムーズに完成へと向かっていきます。
物語を作りたいから、テーマと登場人物と世界観を先に考える。……でも、物語というのはシーンの集合体によって創られるものだと分かりました。
シーンって何? 登場人物の『目的』と『結果』でした。
ということは、登場人物がどんな人でサ○ヤ人級に強いとか、めっちゃすごい必殺技があるとか、世界は終末へと向かっているとか、そういうのって作る上では二次的な要素なんですよ。
いや、勿論問題は無いんですけどね、先に考えるのが好きなら全然。
ただ、先にこれらを考えてしまうと……実は、問題が起きやすくなったりとか。
それは、追々語っていく事にしましょう。
物語を読む人と作る人の間にある、認識の違い
この目的と手段の相違こそが、私達が物語を作って行く上で、最も障害となるものだったのですね。ここで、『テーマ』と『登場人物』と『世界観』について、考えてみましょう。
テーマとは、創作において、芯となる考え、方向性のことですよね。
登場人物とは、物語を構成する為に位置付けられる人物のことですね。
世界観とは、世界に生きている人間から見た、万物全体の解釈のことです。
前提として、協議すべき『シーン』の集合体、即ち『物語』が無ければ決められない内容である事が分かるでしょうか。
同時に思い付いて、それを大事にしたいという事はあります。たまたま繋がって、上手いこと出来ちゃう事もあります。
でも、原則からすれば、これらは核となる『シーン』の集合体の上に創られるものだったんです。
この気付きが、とても重要です。重要でした。
これを外れて『テーマ』『登場人物』『世界観』を先に創ってしまうと、一向にまとまらない話に悶絶する事になります。
所謂、スランプという奴ですね。
物事を考える時、まずはそれを心行くまで分解し、構造を知ってから再構築してみること。
これが本当に大事なんだなあ。
物語を作る時と言わず、世の中にある様々なものを理解する為に必要な手段でもありますよね。
次回は、新たに生まれた疑問点について追求してみましょう。段々と、独創性が生まれていったら……いいなあ。
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