浮遊する無名作家の浅慮

物語構造の分解② 何故、その話は先に進まないのか


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前回の記事で、物語構造の分解について、少しだけお話をしました。
概要が分かったところで、今回はより深く突っ込んでみたいと思います。
とは言っても、殆ど物語を書いたことが無い人向けの内容になると思います。完結作品の書ける、中級者以上の方はバックプリーズ。

本当は、既存の物語を題材にして分解を進めたい所なのですが……公の場で商業作品の内容について分解する訳にも行きませんので、今回は自ら作っていく方向で話を進めて行きたいと思います。

あえてつまらない話を。

何でかって? ……独創性の強い話だと、ケースサンプルとしての価値があんまり無いかなと思ってですね。
え? 読んでいてつまらない? すいません…………


 前置きはいいから

最初は失敗談から。
ドラマを作りたい場合は、登場人物の『行動』と『目的』を主軸に添えたシーン構成を取ることで、その物語が持つ主題がはっきりとしてくる、というお話をしました。

例にしてみたいと思います。

作家を目指す甲さんは、ある恋愛話のシーンを思い付きました。

「主人公のA君がヒロインのBさんに告白する…………。やべえ、これ感動的じゃね?」

何故なら、Bさんは病気で死ぬ事が確定しており、二人の先に未来は無いということが明らかになったからです。自分で書いておきながら…………これで良いのか、甲よ。

まずはプロットを作ろう。そう思い、紙に書き出して考えてみた所、以下のような内容となりました。

-------------------------------------------------
○告白のシーン
・A君が、Bさんに告白をする。
・でも、BさんはA君の告白に答えられません。
・その反応を分かっているA君も、答えられる事はないということを理解していました。
-------------------------------------------------

うーん? ……なんだか、随分とスカスカしてしまいました。
プロットを書いていた甲さんは、きっとこう思っているはず。

「…………あれ? これだけ?」

素晴らしい話を思い付いたと思ったのに、なんか妙に中身が少ないぞ。
もしかして、これは全然駄目なのでは…………



 問題:小説のプロットに何を書いて良いのか分からない件

自分はとても面白いシーンを思い付いたと思ったのに、何で書けるのはこれだけなんだろう……

何かの話を思い付いた時、それをプロットに書き起こしてみたりして、一番最初に思うのがこの現象。なんではっきり言えるかって? 実体験だからさ!
この話、面白いじゃん! からの、この話、面白くなくない……?
瞬殺である。そう、これがプロットの落とし穴です。

プロットなんて書けないし、別に話が面白ければそれで良くない? 俺はプロット書かない派だからさ。
そう言いたくなるのも分かります。でも、ちょっと待って!

こんなにスカスカの状態で、いきなり文章を書き始めても、途中で詰まる事ばかりになってしまって、返って大変なので。
もう少し、プロットに戻ってみましょうよ。

このまま書き始めると、何が起こるかだけ先に書いておこうと思います。

さてー、特に面白くもなベタベタな恋愛話を思い付いてしまった甲さん、ノリノリである。
まだ事情を知らないA君とBさんが、仲睦まじげに話している光景が思い浮かびました。
よし、これだろう。プロットに追加してみよう。

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○二人でデート
・楽しい会話。

○告白のシーン
・A君が、Bさんに告白をする。
・でも、BさんはA君の告白に答えられません。
・その反応を分かっているA君も、答えられる事はないということを理解していました。
-------------------------------------------------

甲さんは思いました。

「…………なんか違わない?」


細けえ事は良いんだよ! 内容は良いんだから、とにかく書いてみよう!
……とりあえず、二人が出会う所から書き始めてみよう。
まず、出会いをどうしようか。ドラマチックな雰囲気が良いなあ。よし、それなら学校の屋上で出会う事にしよう。

書き始めて、ひとまず二人は出会いました。……しかし、これからどうしていいのか分かりません。
中盤まで特に何の意味もない、日常シーンという名目の会話が続きます。

「これ告白しないぞ…………。どうしよう…………えーい、無理矢理繋げちゃうか!!」

完成した作品を見て、絶望する甲氏。

…………とまあ、普通はここまで来ませんよね。とっくに諦めている所でしょう。
これが完結させる事が出来ない原因のひとつというか、ほぼ全てなんですよね。
プロットを作るための目線に立てていない。これが大事なところ。

では、どうしようか。
次回も、このサンプルを用いて少し先を書いてみたいと思います。





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